「これで、なんでアンブリッジなんかが来たのかわかったわ。ファッジが『教きょう育いく令れい』を出して、あの人を学校に押しつけたのよ そしてこんどは、アンブリッジにほかの先生を監視かんしする権限けんげんを与えたんだわ」ハーマイオニーは息が荒くなり、目がギラギラしていた。「信じられない こんなこと、許せない」
「まったくだ」ハリーは右手に目をやった。テーブルの上で拳こぶしを握にぎっている右手に、アンブリッジがハリーに無理やり刻きざみ込こませた文字が、薄うっすらと白く浮き上がっていた。
ところがロンはにんまり笑っていた。
「なに」ハリーとハーマイオニーがロンを睨にらんで同時に言った。
「ああ、マクゴナガルが査察ささつされるのが待ち遠しいよ」ロンがうれしそうに言った。「アンブリッジのやつ、痛い目に遭あうぞ」
「さ、行きましょう」ハーマイオニーがさっと立ち上がった。「早く行かなくちゃ。もしもビンズ先生のクラスを査察するようなら、遅刻ちこくするのはまずいわ……」
しかし、アンブリッジ先生は「魔ま法ほう史し」の査察には来なかった。授業は先週の月曜日と同じく退屈たいくつだった。二時限続きの「魔ま法ほう薬やく」の授業で、三人がスネイプの地ち下か牢ろう教きょう室しつに来たときにも、アンブリッジ先生の姿はなかった。ハリーの月げっ長ちょう石せきのレポートが、右上にトゲトゲしい黒い字で大きく「」と殴なぐり書がきされて返された。
「諸君しょくんのレポートが、ふくろうであればどのような点をもらうかに基もとづいて採点さいてんしてある」マントを翻ひるがえして宿題を返して歩きながら、スネイプが薄うすら笑いを浮かべて言った。「試験の結果がどうなるか、これで諸君も現実的にわかるはずだ」
スネイプは教室の前に戻り、生徒たちと向き合った。
「全ぜん般ぱん的てきに、今回のレポートの水すい準じゅんは惨憺さんたんたるものだ。これがであれば、大多数が落第らくだいだろう。今週の宿題である『毒液どくえきの各種かくしゅ解げ毒どく剤ざい』については、何倍もの努力を期待する。さもなくば、『』を取るような劣れっ等とう生せいには罰則ばっそくを科かさねばなるまい」
マルフォイがフフンと笑い、聞こえよがしの囁ささやき声で、「ヘー『』なんか取ったやつがいるのか」と言うのを聞きつけ、スネイプがニヤリと笑った。
ハリーはハーマイオニーが横目でハリーの点数を見ようとしているのに気づき、急いで月長石のレポートをカバンに滑すべり込こませた。これは自分だけの秘ひ密みつにしておきたいと思った。