今日の授業で、スネイプがまたハリーに落第点をつける口実を与えてなるものかと、ハリーは黒板の説せつ明めい書がきを一行も漏もらさず最低三回読み、それから作業に取りかかった。ハリーの「強きょう化か薬やく」はハーマイオニーのような澄すんだトルコ石色とまではいかなかったが、少なくとも青で、ネビルのようなピンクではなかった。授業の最後に、スネイプの机にフラスコを提出したときは、勝ち誇ほこった気持とほっとした気持が入り交まじっていた。
「まあね、先週ほどひどくはなかったわね」地下牢教室を出て階段を上り、玄げん関かんホールを横切って昼食に向かいながらハーマイオニーが言った。「それに、宿題もそれほど悪い点じゃなかったし。ね」
ロンもハリーも黙だまっていたので、ハーマイオニーが追討おいうちをかけた。「つまり、まあまあの点よ。最高点は期待してなかったわ。基き準じゅんで採点したのだったらそれは無理よ。でも、いまの時点で合格ごうかく点なら、かなり見込みがあると思わない」
ハリーの喉のどからどっちつかずの音が出た。
「もちろん、これから試験までの間にいろいろなことがあるでしょうし、成績せいせきをよくする時間はたくさんあるわ。でも、いまの時点での成績は一種の基き準じゅん線せんでしょ そこから積み上げていけるし……」
三人は一いっ緒しょにグリフィンドールのテーブルに着いた。
「そりゃ、もし『O』を取ってたら、私、ぞくぞくしたでしょうけど……」
「ハーマイオニー」ロンが声を尖とがらせた。「僕たちの点が知りたいんだったら、そう言えよ」
「そんな――そんなつもりじゃ――でも、教えたいなら――」
「僕は『P』さ」ロンがスープを取り分けながら言った。「満足かい」
「そりゃ、何にも恥はじることないぜ」フレッドがジョージ、リー・ジョーダンと連れだって現れ、ハリーの右側に座った。「『P』なら立派なもんだ」
「でも」ハーマイオニーが言った。「『P』って、たしか……」
「『良くないプア』、うん」リー・ジョーダンが言った。「それでも『D』よりはいいよな 『どん底ドレッドフル』よりは」
ハリーは顔が熱くなるのを感じて、ロールパンが詰つまって咽むせたふりをした。ようやく顔を上げたとき、残念ながらハーマイオニーはまだふくろう採点さいてんの話の真っ最中だった。