「さて」トレローニーは、いつもとは別人のようにきびきびと、ハリーの目の前で長い指をパチンと鳴らした。「それでは、あなたの夢日記の書き出しを拝見はいけんしましょう」
ハリーの夢の数々を、トレローニー先生が声を張り上げて解かい釈しゃくし終えるころにはすべての夢が――単にオートミールを食べた夢まで――ぞっとするような死に方で早死するという予言だった、ハリーの同情もかなり薄うすれていた。その間ずっと、アンブリッジ先生は、一メートルほど離はなれてクリップボードにメモを取っていた。そして、終業ベルが鳴ると、真っ先に銀の梯子はしごを下りて行き、十分後に生徒が「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ」の教室に着いたときには、すでにそこでみんなを待っていた。
みんなが教室に入ったとき、アンブリッジ先生は鼻歌を歌いながら独ひとり笑いをしていた。「防衛術の理論」の教科書を取り出しながら、ハリーとロンは、「数かず占うらない」の授業に出ていたハーマイオニーに、「占い学」での出来事をしっかり話して聞かせた。しかし、ハーマイオニーが何か質問する間もなく、アンブリッジ先生が「静せい粛しゅくに」と言い、みんなしんとなった。
「杖つえをしまってね」アンブリッジ先生はにっこりしながらみんなに指示した。もしかしたらと期待して杖を出していた生徒は、すごすごとカバンに杖を戻した。「前回の授業で第一章は終りましたから、今日は十九ページを開いて、『第二章、防衛一般いっぱん理論と派生はせい理論』を始めましょう。おしゃべりは要いりませんよ」
ニターッと独りよがりに笑ったまま、先生は自分の席に着いた。一斉いっせいに十九ページを開きながら、生徒全員がはっきり聞こえるほどのため息をついた。ハリーは今学期中ずっと読み続けるだけの章があるのだろうかとぼんやり考えながら、目次を調べようとした。そのとき、ハーマイオニーがまたしても手を挙あげているのに気づいた。