「理由は」ハリーが怒って聞いた。
「かかわっちゃだめ」ハーマイオニーが慌あわててハリーに囁いた。
「埒らちもないことでわたくしの授業を中断し、乱したからです」アンブリッジ先生が澱よどみなく言った。「わたくしは魔法省のお墨すみつきを得た指し導どう要よう領りょうでみなさんに教えるために来ています。生徒たちに、ほとんどわかりもしないことに関して自分の意見を述べさせることは、要領に入っていません。これまでこの学科を教えた先生方は、みなさんにもっと好き勝手をさせたかもしれませんが、誰一人として――クィレル先生は例外かもしれません。少なくとも、年齢ねんれいにふさわしい教きょう材ざいだけを教えようと自じ己こ規き制せいしていたようですからね――魔法省の査察ささつをパスした先生はいなかったでしょう」
「ああ、クィレルはすばらしい先生でしたとも」ハリーが大声で言った。「ただ、ちょっとだけ欠点があって、ヴォルデモート卿きょうが後頭部から飛び出していたけど」
こう言い放はなったとたん、底冷そこびえするような完璧かんぺきな沈ちん黙もくが訪れた。そして――。
「あなたには、もう一週間罰則ばっそくを科かしたほうがよさそうね、ミスター・ポッター」
アンブリッジが滑なめらかに言った。
ハリーの手の甲こうの傷きずは、まだほとんど癒いえていなかった。そして翌朝にはまた出血しだした。夜の罰則ばっそくの時間中、ハリーは泣き言を言わなかったし、絶対にアンブリッジを満足させるものかと心に決めていた。「僕は嘘うそをついてはいけない」と何度も繰くり返して書きながら、一文字ごとに傷きずが深くなっても、ハリーは一言も声を漏もらさなかった。