「先生、わたくしのメモが届いているかどうかと思いまして。先生の査察ささつの日時を――」
「当然受け取っております。さもなければ、私わたくしの授業に何の用があるかとお尋たずねしていたはずです」そう言うなり、マクゴナガル先生は、アンブリッジ先生にきっぱりと背を向けた。生徒の多くが歓喜かんきの目を見み交かわした。「先ほど言いかけていたように、今日はそれよりずっと難しい、ネズミを『消失』させる練習をします。さて、『消しょう失しつ呪じゅ文もん』は……」
「ェヘン、ェヘン」
「いったい」マクゴナガル先生はアンブリッジ先生に向かって冷たい怒りを放はなった。「そのように中断ばかりなさって、私わたくしの通常の教きょう授じゅ法ほうがどんなものか、おわかりになるのですか いいですか。私は通常、自分が話しているときに私し語ごは許しません」
アンブリッジ先生は横よこっ面つらを張られたような顔をして、一言も言わず、クリップボードの上で羊よう皮ひ紙しをまっすぐに伸ばし、猛烈もうれつに書き込みはじめた。
そんなことは歯し牙がにもかけない様子で、マクゴナガル先生は再びクラスに向かって話しはじめた。
「先ほど言いかけましたように、『消しょう失しつ呪じゅ文もん』は、『消失』させる動物が複雑ふくざつなほど難しくなります。カタツムリは無む脊せき椎つい動どう物ぶつで、それほど大きな課題かだいではありませんが、ネズミは哺ほ乳にゅう類るいで、ずっと難しくなります。ですから、この課題は、夕食のことを考えながらかけられるような魔法ではありません。さあ――唱となえ方は知っているはずです。どのぐらいできるか、拝見はいけんしましょう……」
「アンブリッジに癇かん癪しゃくを起こすな、なんて、よく僕に説せっ教きょうできるな」
声をひそめてロンにそう言いながら、ハリーの顔がニヤッと笑っていた――マクゴナガル先生に対する怒りは、きれいさっぱり消えていた。