次にアンブリッジに会うのは、夜の罰則ばっそくのときだと、ハリーはそう思ったが、違っていた。「魔ま法ほう生せい物ぶつ飼し育いく学がく」に出るのに、森へ向かって芝生しばふを下りて行くと、アンブリッジとクリップボードが、グラブリー‐プランク先生のそばで待ち受けていた。
「いつもはあなたがこのクラスの受け持ちではない。そうですね」
みんなが架台かだいのところに到とう着ちゃくしたとき、ハリーはアンブリッジがそう質問するのを聞いた。架台には、捕獲ほかくされたボウトラックルが、まるで生きた小枝のように、ガサガサとワラジムシをひっ掻かき回していた。
「そのとおり」グラブリー‐プランク先生は両手を後ろ手に背中で組み、踵かかとを上げたり下げたりしながら答えた。「わたしゃハグリッド先生の代用教員でね」
ハリーは、ロン、ハーマイオニーと不安げに目配せし合った。マルフォイがクラッブ、ゴイルと何か囁ささやき合っていた。ハグリッドについてのでっち上げ話を、魔法省の役人に吹き込むチャンスだと、手ぐすね引いているのだろう。
「ふむむ」アンブリッジ先生は声を落としたが、ハリーにはまだはっきり声が聞き取れた。
「ところで――校長先生は、おかしなことに、この件に関しての情報をなかなかくださらないのですよ――あなたは教えてくださるかしら ハグリッド先生が長々と休きゅう暇かを取っているのは、何が原因なのでしょう」
ハリーはマルフォイが待ってましたと顔を上げるのを見た。
「そりゃ、できませんね」グラブリー‐プランク先生がなんのこだわりもなく答えた。「この件は、あなたがご存知ぞんじのこと以上には知らんです。ダンブルドアからふくろうが来て、数週間教える仕事はどうかって言われて受けた、それだけですわ。さて……それじゃ、始めようかね」
「どうぞ、そうしてください」アンブリッジ先生はクリップボードに何か走り書きしながら言った。
アンブリッジはこの授業では作戦を変え、生徒の間を歩き回って魔法生物についての質問をした。だいたいの生徒がうまく答え、少なくともハグリッドに恥はじをかかせるようなことにはならなかったので、ハリーは少し気が晴れた。