「この宇宙に、宿題よりもっと大切なものがあるなんて思わなかったぜ」ロンが言った。
「バカなこと言わないで。もちろんあるわ」ハーマイオニーが言った。いま突然ハーマイオニーの顔は、しもべ妖精福祉振興協会の話をするときにいつも見せる、迸ほとばしるような情じょう熱ねつで輝かがやいていた。ハリーはなんだかまずいぞと思った。
「それはね、自分を鍛きたえるってことなのよ。ハリーが最初のアンブリッジの授業で言ったように、外の世界で待ち受けているものに対して準備をするのよ。それは、私たちが確実に自じ己こ防ぼう衛えいできるようにするということなの。もしこの一年間、私たちが何にも学ばなかったら――」
「僕たちだけじゃ大したことはできないよ」ロンが諦あきらめ切ったように言った。「つまり、まあ、図書室に行って呪のろいを探し出したり、それを試ためしてみたり、練習したりはできるだろうけどさ――」
「たしかにそうね。私も、本からだけ学ぶという段階は通り越してしまったと思うわ」ハーマイオニーが言った。「私たちに必要なのは、先生よ。ちゃんとした先生。呪じゅ文もんの使い方を教えてくれて、間違ったら直してくれる先生」
「君がルーピンのことを言っているんなら……」ハリーが言いかけた。
「ううん、違う。ルーピンのことを言ってるんじゃないの」ハーマイオニーが言った。「ルーピンは騎き士し団だんのことで忙いそがしすぎるわ。それに、どっちみちホグズミードに行く週末ぐらいしかルーピンに会えないし、そうなると、とても十分な回数とは言えないわ」
「じゃ、誰なんだ」ハリーはハーマイオニーに向かってしかめ面つらした。
ハーマイオニーは大きなため息を一つついた。
「わからない」ハーマイオニーが言った。「私、あなたのことを言ってるのよ、ハリー」
一いっ瞬しゅん、沈ちん黙もくが流れた。夜のそよ風が、ロンの背後の窓ガラスをカタカタ鳴らし、暖炉だんろの火をちらつかせた。
「僕の何のことを」ハリーが言った。
「あなたが『闇やみの魔ま術じゅつに対する防衛術』を教えるって言ってるの」
ハリーはハーマイオニーをじっと見た。それからロンを見た。ハーマイオニーが、たとえばしもべ妖精福祉振興協会のように突とっ拍ぴょう子しもない計画を説明しはじめたときに、呆あきれ果ててロンと目を見み交かわすことがあるが、こんどもそうだろうと思っていた。ところが、ロンが呆れ顔をしていなかったので、ハリーは度肝どぎもを抜かれた。
ロンは顔をしかめていたが、明らかに考えていた。それからロンが言った。