「そいつはいいや」
「何がいいんだ」ハリーが言った。
「君が」ロンが言った。「僕たちにそいつを教えるってことがさ」
「だって……」
ハリーはニヤッとした。二人でハリーをからかっているに違いない。
「だって、僕は先生じゃないし、そんなこと僕には……」
「ハリー、あなたは『闇の魔術に対する防衛術』で、学年のトップだったわ」
「僕が」ハリーはますますニヤッとした。「違うよ。どんなテストでも僕は君にかなわなかった――」
「実は、そうじゃないの」ハーマイオニーが冷静れいせいに言った。「三年生のとき、あなたは私に勝ったわ――あの年に初めてこの科目のことがよくわかった先生に習って、しかも初めて二人とも同じテストを受けたわ。でも、ハリー、私が言ってるのはテストの結果じゃないの。あなたがこれまでやって来たことを考えて」
「どういうこと」
「あのさ、僕、自信がなくなったよ。こんなに血の巡めぐりの悪いやつに教えてもらうべきかな」ロンが、ニヤニヤしながらハーマイオニーにそう言うと、ハリーのほうを見た。
「どういうことかなぁ」ロンはゴイルが必死に考えるような表情を作った。「うう……一年生――君は『例のあの人』から『賢者けんじゃの石』を救った」
「だけど、あれは運がよかったんだ」ハリーが言った。「技とかじゃないし――」
「二年生」ロンが途と中ちゅうで遮さえぎった。「君はバジリスクをやっつけて、リドルを滅ほろぼした」
「うん。でもフォークスが現れなかったら、僕――」
「三年生」ロンが一段と声を張り上げた。「君は百人以上の吸魂鬼ディメンターを一度に追い払った――」
「あれは、だって、まぐれだよ。もし『逆ぎゃく転てん時ど計けい』がなかったら――」
「去年」ロンはいまや叫さけぶような声だ。「君はまたしても『例のあの人』を撃退げきたいした――」
「こっちの言うことを聞けよ」
こんどはロンもハーマイオニーまでもニヤニヤしているので、ハリーはほとんど怒ったように言った。