ハーマイオニーの言おうとしたことをハリーが引き取って言った。
「――たぶん今朝、アズカバンに送り返されていただろうな」
ハリーはあまり気持を集中せずに杖つえを振った。ウシガエルが膨ふくれ上がって緑の風船のようになり、ピーピーと高い声を出した。
「シレンシオ 黙れ」
ハーマイオニーが杖をハリーのカエルに向け、急いで唱となえた。カエルは二人の前で、声を上げずに萎しぼんだ。
「とにかく、シリウスは、もう二度とやってはいけない。それだけよ。ただ、どうやってシリウスにそれを知らせたらいいかわからない。ふくろうは送れないし」
「もう危険は冒おかさないと思うけど」ロンが言った。「それほどばかじゃない。あの女に危あやうく捕つかまりかけたって、わかってるさ。シレンシオ」
ロンの前の大きな醜みにくいワタリガラスが嘲あざけるようにカーと鳴いた。
「黙だまれ シレンシオ」
カラスはますますやかましく鳴いた。
「あなたの杖つえの動かし方が問題よ」批ひ判はん的てきな目でロンを観察かんさつしながら、ハーマイオニーが言った。「そんなふうに振るんじゃなくて、鋭するどく突つくって感じなの」
「ワタリガラスはカエルより難しいんだ」ロンが癇かんに障さわったように言った。
「いいわよ。取り替かえましょ」
ハーマイオニーがロンのカラスを捕まえ、自分の太ったウシガエルと交換こうかんしながら言った。
「シレンシオ」
ワタリガラスは相変わらず鋭するどい嘴くちばしを開けたり閉じたりしていたが、もう音は出てこなかった。
「大変よろしい、ミス・グレンジャー」フリットウィック先生のキーキー声で、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人とも飛び上がった。「さあ、ミスター・ウィーズリー、やってごらん」
「な―― あ――ァ、はい」ロンは慌あわてふためいた。「えー――シレンシオ」
ロンの突きが強すぎて、ウシガエルの片目かためを突いてしまい、カエルは耳を劈つんざく声でグワッ、グワッと鳴きながらテーブルから飛び降おりた。
ハリーとロンだけが「黙らせ呪じゅ文もん」の追つい加か練れん習しゅうをするという宿題を出されたが、二人ともまたかと思っただけだった。