外は土ど砂しゃ降ぶりなので、生徒たちは休きゅう憩けい時間も城内に留まることを許された。三人は二階の混み合ったやかましい教室に、空あいている席を見つけた。ピーブズがシャンデリア近くに眠そうにぷかぷか浮いて、ときどきインクつぶてを誰かの頭に吹きつけていた。三人が座るか座らないうちに、アンジェリーナが、むだ話に忙いそがしい生徒たちを掻かき分けてやって来た。
「許可をもらったよ」アンジェリーナが言った。「クィディッチ・チームを再さい編成へんせいできる」
「やった」ロンとハリーが同時に叫さけんだ。
「うん」アンジェリーナがにっこりした。「マクゴナガルのところに行ったんだ。たぶん、マクゴナガルはダンブルドアに控訴こうそしたんだと思う。とにかく、アンブリッジが折れた。ざまみろ だから、今夜七時に競技場に来てほしい。ロスした時間を取り戻さなくっちゃ。最初の試合まで、三週間しかないってこと、自覚してる」
アンジェリーナは、生徒の間をすり抜けるように歩き去りながら、ピーブズのインクつぶてを危あやうくかわし代わりにそれは、そばにいた一年生に命中した、姿が見えなくなった。
窓から外を眺ながめて、ロンの笑顔がちょっと翳かげった。外は叩たたきつけるような雨で、ほとんど不ふ透とう明めいだった。
「やめばいいけど。ハーマイオニー、どうかしたのか」
ハーマイオニーも窓を見つめていたが、何か見ている様子ではなかった。焦しょう点てんは合っていないし、顔をしかめている。
「ちょっと考えてるの……」雨が流れ落ちる窓に向かってしかめ面つらをしたまま、ハーマイオニーが答えた。
「シリ――スナッフルズのことを」ハリーが聞いた。
「ううん……ちょっと違う……」ハーマイオニーが一言一言噛かみ締しめるように言った。「むしろ……もしかして……私たちのやってることは正しいんだし……考えると……そうよね」
ハリーとロンが顔を見合わせた。
「なるほど、明確めいかくなご説明だったよ」ロンが言った。「君の考えをこれほどきちんと説明してくれなかったら、僕たち気になってしょうがなかったろうけど」
ハーマイオニーは、たったいまロンがそこにいることに気づいたような目でロンを見た。
「私がちょっと考えていたのは」ハーマイオニーの声が、こんどはしっかりしていた。「私たちのやっている、『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』のグループを始めるということが、果たして正しいかどうかってことなの」
「えーッ」ハリーとロンが同時に言った。
「ハーマイオニー、君が言い出しっぺじゃないか」ロンが憤慨ふんがいした。
「わかってるわ」ハーマイオニーは両手を組んで、もじもじさせながら言った。「でも、スナッフルズと話したあとで……」
「でも、スナッフルズは大賛成だったよ」ハリーが言った。
「そう」ハーマイオニーがまた窓の外を見つめた。「そうなの。だからかえって、この考えが結局間違っていたのかもしれないって思って……」
ピーブズが三人の頭上に腹這ばいになって浮かび、豆まめ鉄でっ砲ぽうを構かまえていた。三人は反はん射しゃ的てきにカバンを頭の上に持ち上げ、ピーブズが通り過ぎるのを待った。