七時半、ハリー、ロン、ハーマイオニーはグリフィンドールの談だん話わ室しつを出た。ハリーは古ぼけた羊よう皮ひ紙しを握にぎり締しめていた。五年生は、九時まで外の廊下ろうかに出ていてもよいことになってはいたが、三人とも、神しん経けい質しつにあたりを見回しながら八階に向かった。
「止まれ」最後の階段の上で羊よう皮ひ紙しを広げながら、ハリーは警告けいこくを発し、杖つえで羊皮紙を軽く叩たたいて呪じゅ文もんを唱となえた。
「我、ここに誓ちかう。我、よからぬことを企たくらむ者なり」
羊皮紙にホグワーツの地図が現れた。小さな黒い点が動き回り、それぞれに名前がついていて、誰がどこにいるかが示されている。
「フィルチは三階だ」ハリーが地図を目に近づけながら言った。「それと、ミセス・ノリスは五階だ」
「アンブリッジは」ハーマイオニーが心配そうに聞いた。
「自分の部屋だ」ハリーが指で示した。「オッケー、行こう」
三人は、ドビーがハリーに教えてくれた場所へと廊下ろうかを急いだ。大きな壁掛かべかけタペストリーに「バカのバーナバス」が、愚おろかにもトロールにバレエを教えようとしている絵が描いてある。その向かい側の、何の変哲へんてつもない石壁いしかべがその場所だ。
「オーケー」
ハリーが小声で言った。虫食いだらけのトロールの絵が、バレエの先生になるはずだったバーナバスを、容赦ようしゃなく棍棒こんぼうで打ち据すえていたが、その手を休めてハリーたちを見た。
「ドビーは、気持を必要なことに集中させながら、壁のここの部分を三回往いったり来きたりしろって言った」
三人で実行に取りかかった。石壁の前を通りすぎ、窓のところできっちり折り返して逆方向に歩き、反対側にある等とう身しん大だいの花瓶かびんのところでまた折り返した。ロンは集中するのに眉間みけんに皺しわを寄せ、ハーマイオニーは低い声で何かブツブツ言い、ハリーはまっすぐ前を見つめて両手の拳こぶしを握にぎり締しめた。
戦いを学ぶ場所が必要です……ハリーは思いを込めた……どこか練習するところをください……どこか連中に見つからないところを……。
「ハリー」
三回目に石壁を通り過ぎて振り返ったとき、ハーマイオニーが鋭するどい声を上げた。