石壁にピカピカに磨みがき上げられた扉とびらが現れていた。ロンは少し警けい戒かいするような目で扉を見つめていた。ハリーは真しん鍮ちゅうの取っ手に手を伸ばし、扉を引いて開け、先に中に入った。広々とした部屋は、八階下の地ち下か牢ろう教きょう室しつのように、揺ゆらめく松明たいまつに照らされていた。
壁際かべぎわには木の本棚ほんだなが並び、椅子の代わりに大きな絹きぬのクッションが床に置かれている。一番奥の棚には、いろいろな道具が収められていた。「かくれん防ぼう止し器き」、「秘ひ密みつ発はっ見けん器き」、それに、先学期、偽にせムーディの部屋に掛かっていたものに違いないと思われるひびの入った大きな「敵てき鏡かがみ」。
「これ、『失しっ神しん術じゅつ』を練習するときにいいよ」ロンが足でクッションを一枚突つきながら、夢中になって言った。
「それに、見て この本」ハーマイオニーは興こう奮ふんして、大きな革張かわばりの学がく術じゅつ書しょの背せ表びょう紙しに次々と指を走らせた。「『通つう常じょうの呪のろいとその逆ぎゃく呪のろい概論がいろん』……『闇やみの魔ま術じゅつの裏うらをかく』……『自じ己こ防ぼう衛えい呪じゅ文もん学がく』……ウワーッ……」
ハーマイオニーは顔を輝かがやかせてハリーを見た。何百冊という本があるおかげで、ついにハーマイオニーが自分は正しいことをしていると確信かくしんしたと、ハリーにはわかった。
「ハリー、すばらしいわ。ここにはほしいものが全部ある」
それ以上よけいなことはいっさい言わず、ハーマイオニーは棚たなから「呪われた人のための呪い」を引き抜き、手近なクッションに腰を下ろし、読みはじめた。
扉とびらを軽く叩たたく音がした。ハリーが振り返ると、ジニー、ネビル、ラベンダー、パーバティ、ディーンが到とう着ちゃくしたところだった。
「フワーァ」ディーンが感服かんぷくして見回した。「ここはいったい何だい」
ハリーが説明しはじめたが、途と中ちゅうでまた人が入ってきて、また最初からやり直しだった。八時までには、全部のクッションが埋まっていた。ハリーは扉に近づき、鍵穴かぎあなから突つき出している鍵を回した。カシャッと小こ気き味みよい大きな音とともに鍵が掛かかり、みんながハリーを見て静かになった。ハーマイオニーは読みかけの「呪われた人のための呪い」のページに栞しおりを挟はさみ、本を脇わきに置いた。
「えーと」ハリーは少し緊きん張ちょうしていた。「ここが練習用に僕たちが見つけた場所です。それで、みんなは――えー――ここでいいと思ったみたいだし」
「素敵すてきだわ」チョウがそう言うと、他の何人かも、そうだそうだと呟つぶやいた。
「変だなあ」フレッドがしかめ面つらで部屋を眺ながめ回した。「俺おれたち、一度ここで、フィルチから隠れたことがある。ジョージ、憶おぼえてるか だけど、そのときは単なる箒ほうき置おき場ばだったぞ」