ハリーは部屋の中央に進み出た。ザカリアス・スミスに変な現げん象しょうが起きていた。アンソニー・ゴールドスタインの武器を解かい除じょするのに呪文を唱となえるたびに、スミス自身の杖が飛んでいってしまう。しかもアンソニーは何の呪文を唱えている様子もない。周りを少し見回すだけで、ハリーは謎なぞを見破った。フレッドとジョージがスミスのすぐそばにいて、交互にスミスの背中に杖を向けていたのだ。
「ごめんよ、ハリー」ハリーと目が合ったとたん、ジョージが急いで謝あやまった。「我慢がまんできなくてさ」
ハリーは間違った呪文のかけ方を直そうと、他の組を見回った。ジニーはマイケル・コーナーと組んでいたが、かなりできる。ところが、マイケルは、下へ手たなのか、ジニーに呪のろいをかけるのをためらっているかのどちらかだ。アーニー・マクミランは杖を不必要に派は手でに振り回し、相手につけ入る隙すきを与えていた。クリービー兄弟は熱心だったがミスが多く、周りの本棚ほんだなからさんざん本が飛び出すのは、主にこの二人のせいだった。ルーナ・ラブグッドも同じくむらがあり、ときどきジャスティン・フィンチ‐フレッチリーの手から杖つえをきりきり舞まいさせて吹き飛ばすかと思えば、髪かみの毛を逆立さかだたせるだけのときもあった。
「オーケー、やめ」ハリーが叫さけんだ。「やめ やめだよ」
ホイッスルが必要だな、とハリーは思った。すると、たちまち一番手近に並んだ本の上に、ホイッスルが載のっているのが見つかった。ハリーはそれを取り上げて、強く吹いた。みんなが杖を下ろした。
「なかなかよかった」ハリーが言った。「でも、間違いなく改善かいぜんの余よ地ちがあるね」ザカリアス・スミスがハリーを睨にらみつけた。「もう一度やろう」
ハリーはもう一度見回った。こんどはあちこちで立ち止まって助言じょげんした。だんだん全体のでき具合がよくなってきた。ハリーはしばらくの間、チョウとその友達の組を避さけていた。しかし、他の組をみんな二回ずつ見回ったあと、これ以上この二人を無む視しするわけにはいかないと思った。