「ああ、だめだわ」ハリーが近づくと、チョウがちょっと興こう奮ふん気ぎ味みに言った。「エクスペリアーミウス じゃなかった、エクスペリメリウス――あ、マリエッタ、ごめん」
巻き毛の友達の袖そでに火が点ついた。マリエッタは自分の杖で消し、ハリーのせいだとばかり睨にらみつけた。
「あなたのせいで上がってしまったわ。いままではうまくできたのに」チョウがうち萎しおれた。
「とてもよかったよ」ハリーは嘘うそをついた。しかし、チョウが眉まゆを吊つり上げたので、言い直した。「いや、そりゃ、いまのはよくなかったけど、君がちゃんとできることは知ってるんだ。向こうで見ていたから」
チョウが声を上げて笑った。友達のマリエッタは、ちょっと不ふ機き嫌げんな顔で二人を見ると、そこから離はなれていった。
「放ほうっておいて」チョウが呟つぶやいた。「あの人、ほんとはここに来たくなかったの。でも私が引っ張ってきたのよ。ご両親から、アンブリッジのご機嫌を損そこねるようなことはするなって禁じられたの。ほら――お母様が魔法省に勤めているから」
「君のご両親は」ハリーが聞いた。
「そうね、私の場合も、アンブリッジに疎うとまれるようなことはするなって言われたわ」チョウは誇ほこらしげに胸を張った。「でも、あんなことがあったあとなのに、私が『例のあの人』に立ち向かわないとでも思っているなら……。だってセドリックは――」チョウは困惑こんわくした表情で言葉を切った。二人の間に、気まずい沈ちん黙もくが流れた。テリー・ブートの杖がヒュッとハリーの耳元を掠かすめて、アリシア・スピネットの鼻に思いっ切りぶつかった。
「あのね、私のパパは、反魔法省運動をとっても支持しているもン」
ハリーのすぐ後ろで、ルーナ・ラブグッドの誇ほこらしげな声がした。相手のジャスティン・フィンチ‐フレッチリーが、頭の上まで巻き上げられたローブからなんとか抜け出そうとすったもんだしてるうちに、ルーナは明らかにハリーたちの会話を盗み聞きしていたのだ。
「パパはね、ファッジがどんなにひどいことをしたって聞かされても驚おどろかないって、いつもそう言ってるもン。だって、ファッジが小こ鬼おにを何人暗殺あんさつさせたか それに、『神しん秘ぴ部ぶ』を使って恐ろしい毒薬を開発かいはつしてて、反対する者にはこっそり毒を盛るんだ。その上、ファッジにはアンガビュラー・スラッシキルターがいるもンね――」
「質問しないで」ハリーは、何か聞きたそうに口を開きかけたチョウに囁ささやいた。チョウはクスクス笑った。