ハリーは男だん子し寮りょうの階段を全速力で駆かけ上がり、トランクから「透とう明めいマント」と「忍しのびの地図」を取ってきた。超ちょうスピードだったので、ハーマイオニーがスカーフと手袋を着け、お手製てせいの凸凹でこぼこしたしもべ妖よう精せい帽ぼう子しを被かぶって、急いで女子寮から飛び出してくる五分前には、ハリーもロンもとっくに出かける準備ができていた。
「だって、外は寒いわよ」
ロンが遅おそいぞとばかりに舌打したうちしたので、ハーマイオニーが言い訳した。
三人は肖しょう像ぞう画がの穴を這はい出し、急いで透明マントに包くるまった。――ロンは背がぐんと伸びて、屈かがまないと両足が見えるほどだった――それから、ときどき立ち止まっては、フィルチやミセス・ノリスがいないかどうか地図で確かめ、ゆっくり、慎しん重ちょうにいくつもの階段を下りた。運のいいことに、「ほとんど首無しニック」以外は誰も見かけなかった。ニックはするする動きながら、なんとはなしに鼻歌を歌っていたが、なんだか「ウィーズリーこそ我が王者」に似た節ふしなのがいやだった。三人は、玄げん関かんホールを忍び足で横切り、静まり返った雪の校庭に出た。行く手に四角い金色の小さな灯あかりと、小屋の煙突から煙がくるくる立ち昇のぼるのが見え、ハリーは心が躍おどった。ハリーが足を速めると、あとの二人は押し合いへし合いぶつかり合いながらあとに続いた。だんだん深くなる雪を、夢中でザクザク踏ふみしめながら、三人はやっと小屋の戸口に立った。ハリーが拳こぶしで木の戸を三度叩たたくと、中で犬が狂ったように吠ほえはじめた。
「ハグリッド。僕たちだよ」ハリーが鍵穴かぎあなから呼んだ。
「よう、来たか」どら声がした。
三人はマントの下で、互いににっこりした。ハグリッドの声の調子で、喜んでいるのがわかった。「帰ってからまだ三秒と経たってねえのに……ファング、どけ、どけ……どけっちゅうに、このバカタレ……」
閂かんぬきがはずされ、扉とびらがギーッと開あいて、ハグリッドの頭が隙間すきまから現れた。
ハーマイオニーが悲鳴ひめいを上げた。
「おい、おい、静かにせんかい」ハグリッドが三人の頭越しにあたりをギョロギョロ見回しながら、慌あわてて言った。「例のマントの下か よっしゃ、入れ、入れ」
狭せまい戸口を三人でぎゅうぎゅう通り抜け、ハグリッドの小屋に入ると、三人は透明マントを脱ぎ捨すて、ハグリッドに姿を見せた。
「ごめんなさい」ハーマイオニーが喘あえぐように言った。「私、ただ――まあ、ハグリッド」
「なんでもねえ。なんでもねえったら」
ハグリッドは慌ててそう言うと、戸を閉め、急いでカーテンを全部閉めた。しかし、ハーマイオニーは驚きょう愕がくしてハグリッドを見つめ続けた。