ハグリッドの髪かみはべっとりと血で塊かたまり、顔は紫むらさき色いろやどす黒い傷きずだらけで、腫はれ上がった左目が細い筋すじのように見える。顔も手も切り傷だらけで、まだ血が出ているところもある。そろりそろりと歩く様子から、ハリーは肋あばら骨ぼねが折れているのではないかと思った。たしかに、いま旅から帰ったばかりらしい。分厚ぶあつい黒の旅行マントが椅子の背に掛かけてあり、小さな子供なら数人運べそうな雑嚢ざつのうが戸のそばに立て掛けてあった。ハグリッド自身は、普通の人の二倍はある体で、足を引きずりながら暖炉だんろに近づき、銅どうのヤカンを火にかけていた。
「いったい何があったの」ハリーが問い詰つめた。ファングは三人の周りを跳はね回り、顔を舐なめようとしていた。
「言ったろうが、なんでもねえ」ハグリッドが断固だんことして言い張った。「茶、飲むか」
「何でもないはずないよ」ロンが言った。「ひどい状じょう態たいだぜ」
「言っとるだろうが、ああ、大丈夫だいじょぶだ」ハグリッドは上体を起こし、三人のほうを見て笑いかけたが、顔をしかめた。「いやはや、おまえさんたちにまた会えてうれしいぞ――夏休みは、楽しかったか え」
「ハグリッド、襲おそわれたんだろう」ロンが言った。
「何度も言わせるな。なんでもねえったら」ハグリッドが頑がんとして言った。
「僕たち三人のうち誰かが、ひき肉状態の顔で現れたら、それでも何でもないって言うかい」ロンが突つっ込こんだ。
「マダム・ポンフリーのところに行くべきだわ、ハグリッド」ハーマイオニーが心配そうに言った。「ひどい切り傷きずもあるみたいよ」
「自分で処置しょちしとる。ええか」ハグリッドが抑おさえつけるように言った。
ハグリッドは小屋の真ん中にある巨大な木のテーブルまで歩いて行き、置いてあった布巾ふきんをぐいと引いた。その下から、車のタイヤより少し大きめの、血の滴したたる緑がかった生肉が現れた。
「まさか、ハグリッド、それ、食べるつもりじゃないよね」ロンはよく見ようと体を乗り出した。「毒があるみたいに見える」
「それでええんだ。ドラゴンの肉だからな」ハグリッドが言った。「それに、食うために手に入れたわけじゃねえ」
ハグリッドは生肉を摘つまみ上げ、顔の左半分にビタッと貼はりつけた。緑色がかった血が顎あごひげに滴り落ち、ハグリッドは気持よさそうにウーッと呻うめいた。
「楽になったわい。こいつぁ、ずきずきに効きく」
「それじゃ、何があったのか、話してくれる」ハリーが聞いた。
「できねえ、ハリー、極秘ごくひだ。漏もらしたらクビになっちまう」
「ハグリッド、巨人に襲われたの」ハーマイオニーが静かに聞いた。
ドラゴンの生肉がハグリッドの指からずり落ち、グチャグチャとハグリッドの胸を滑すべり落ちた。