「巨人」
ハグリッドは生肉がベルトのところまで落ちる前に捕つかまえ、また顔にビタッと貼はりつけた。
「誰が巨人なんぞと言った おまえさん、誰と話をしたんだ 誰が言った 俺おれが何したと――誰が俺のその――なんだ」
「そう思っただけよ」ハーマイオニーが謝あやまるように言った。
「ほう、そう思っただけだと」
ハグリッドは、生肉で隠されていないほうの目で、ハーマイオニーを厳きびしく見み据すえた。
「なんて言うか……見え見えだし」ロンが言うと、ハリーが頷うなずいた。
ハグリッドは三人をじろりと睨にらむと、フンと鼻を鳴らし、生肉をテーブルの上に放ほうり投げ、ピーピー鳴っているヤカンのほうにのっしのっしと歩いて行った。
「おまえさんらみてえな小童こわっぱは初めてだ。必要以上に知りすぎとる」
ハグリッドは、バケツ形マグカップ三個に煮に立たった湯をバシャバシャ注ぎながら、ぶつくさ言った。
「誉ほめとるわけじゃあねえぞ。知りたがり屋、とも言うな。お節介せっかいとも」
しかし、ハグリッドのひげがひくひく笑っていた。
「それじゃ、巨人を探していたんだね」ハリーはテーブルに着きながらニヤッと笑った。
ハグリッドは紅茶を三人の前に置き、腰を下ろして、また生肉を取り上げるとビタッと顔に戻した。
「しょうがねえ」ハグリッドがぶすっと言った。「そうだ」
「見つけたの」ハーマイオニーが声をひそめた。
「まあ、正直言って、連中を見つけるのはそう難しくはねえ」ハグリッドが言った。「でっけえからな」
「どこにいるの」ロンが聞いた。
「山だ」ハグリッドは答えにならない答えをした。
「だったら、どうしてマグルに出――」
「出くわしとる」ハグリッドが暗い声を出した。「ただ、そいつらが死ぬと、山での遭難そうなん事じ故こっちゅうことになるわけだ」
ハグリッドは生肉をずらして、傷きずの一番ひどいところに当てた。
「ねえ、ハグリッド。何をしていたのか、話してくれよ」ロンが言った。「巨人に襲おそわれた話を聞かせてよ。そしたらハリーが、吸魂鬼ディメンターに襲われた話をしてくれるよ」
ハグリッドは飲みかけの紅茶に咽むせ、生肉を取り落とした。ハグリッドがしゃべろうとして咳せき込こむし、生肉がぺチャッと軽い音を立てて床に落ちるしで、大量の唾つばと紅茶とドラゴンの血がテーブルに飛び散った。