「なのに、その頭かしらのところまで、のこのこ参上したの」ハーマイオニーが息を弾はずませた。
「うー……参上ちゅうか、下って行ったんだがな。頭は谷底に寝転んでいたんだ。やつらは、四つの高たけえ山の間の深く凹へっこんだとこの、湖のそばにいた。そんで、カーカスは湖のすぐ傍かたわらに寝そべって、自分と女房に食いもんを持ってこいと吼ほえていた。俺おれはオリンペと山を下って行った――」
「だけど、ハグリッドたちを見つけたとき、やつらは殺そうとしなかったの」
ロンが信じられないという声で聞いた。
「何人かはそう考えたに違えねえ」ハグリッドが肩をすくめた。「しかし、俺たちは、ダンブルドアに言われたとおりにやった。つまりだな、貢みつぎ物ものを高々と持ち上げて、ガーグだけをしっかり見て、ほかの連中は無む視しすること。俺たちはそのとおりにやった。そしたら、ほかの連中はおとなしくなって、俺たちが通るのを見とった。そんで、俺たちはまっすぐカーカスの足下あしもとまで行ってお辞じ儀ぎして、その前に貢ぎ物を置いた」
「巨人には何をやるものなの」ロンが熱っぽく聞いた。「食べ物」
「うんにゃ。やつは食いもんは十分手に入る」ハグリッドが言った。「頭かしらに魔法を持って行ったんだ。巨人は魔法が好きだ。ただ、俺たちが連中に不利な魔法を使うのが気に食わねえだけよ。とにかく、最初の日は、頭に『グブレイシアンの火の枝』を贈おくった」
ハーマイオニーは「うわーっ」と小さく声を上げたが、ハリーとロンはちんぷんかんぷんだと顔をしかめた。
「何の枝――」
「永遠の火よ」ハーマイオニーがイライラと言った。「二人とももう知ってるはずなのに。フリットウィック先生が授業で少なくとも二回はおっしゃったわ」
「あー、とにかくだ」
ロンが何か言い返そうとするのを遮さえぎり、ハグリッドが急いで言った。
「ダンブルドアが小枝に魔法をかけて、永遠に燃え続けるようにしたんだが、こいつぁ、並みの魔法使いができるこっちゃねえ。そんで、俺は、カーカスの足下の雪ん中にそいつを置いて、こう言った。『巨人の頭に、アルバス・ダンブルドアからの贈り物でございます。ダンブルドアがくれぐれもよろしくとのことです』」
「それで、カーカスは何て言ったの」ハリーが熱っぽく聞いた。
「なんも」ハグリッドが答えた。「英語がしゃべれねえ」
「そんな」
「それはどうでもよかった」ハグリッドは動じなかった。「ダンブルドアはそういうことがあるかもしれんと警告けいこくしていなさった。カーカスは、俺たちの言葉がしゃべれる巨人を二、三人、大声で呼ぶぐれえのことはできたんで、そいつらが通訳つうやくした」