「誰の頭が」ハーマイオニーが息を呑のんだ。
「カーカスの」ハグリッドが重苦しく言った。「新しいガーグがいた。ゴルゴマスだ」
ハグリッドがフーッとため息をついた。
「いや、最初のガーグと友ゆう好こう的てきに接せっ触しょくして二日後に、頭かしらが新しくなるたぁ思わなんだ。そんで、どうもゴルゴマスは俺たちの言うことに興きょう味みがねえような予感がした。そんでも、やってみなけりゃなんねえ」
「そいつのところに話しに行ったの」ロンがまさかという顔をした。「仲間なかまの巨人の首を引っこ抜いたのを見たあとなのに」
「むろん、俺たちは行った」ハグリッドが言った。「はるばる来たのに、たった二日で諦あきらめられるもんか カーカスにやるはずだった次の贈おくり物ものを持って、俺たちは下りて行った」
「口を開く前に、俺はこりゃぁだめだと思った。あいつはカーカスの兜かぶとを被かぶって座っててな、俺たちが近づくのをニヤニヤして見とった。でっかかったぞ。そこにいた連中の中でも一番でっけえうちに入るな。髪かみとお揃そろいの黒い歯だ。そんで骨のネックレスで、ヒトの骨のようなのも何本かあったな。まあ、とにかく俺はやってみた――ドラゴンの革かわの大きな巻物まきものをさし出したのよ――そんで、こう言った。『巨人のお頭かしらへの贈り物――』次の瞬しゅん間かん、気がつくと、足を捕つかまれて逆さかさ吊づりだった。やつの仲間が二人、俺をむんずとつかんでいた」
ハーマイオニーが両手でパチンと口を覆おおった。
「そんなのからどうやって逃のがれたの」ハリーが聞いた。
「オリンペがいなけりゃ、だめだったな」ハグリッドが言った。「オリンペが杖つえを取り出して、俺が見た中でも一番の早業はやわざで呪じゅ文もんを唱となえた。実じっつに冴さえとったわ。俺をつかんでた二人の両目を、『結けつ膜まく炎えんの呪のろい』で直ちょく撃げきだ。で、二人はすぐ俺を落っことした。――だが、さあ、厄介やっかいなことになった。やつらに不利な魔法を使ったわけだ。巨人が魔法使いを憎にくんどるのはまさにそれなんだ。逃げるしかねえ。そんで、どうやったってもう、連中の居きょ住じゅう地ちに堂々どうどうと戻ることはできねえ」
「うわあ、ハグリッド」ロンがぼそりと言った。
「じゃ、三日間しかそこにいなかったのに、どうしてここに帰るのにこんなに時間がかかったの」ハーマイオニーが聞いた。
「三日でそっから離はなれたわけじゃねえ」ハグリッドが憤慨ふんがいしたように言った。「ダンブルドアが俺たちにお任まかせなすったんだ」
「だって、いま、どうやったってそこには戻れなかったって言ったわ」
「昼ひる日ひ中なかはだめだった。そうとも。ちいっと策さくを練ねり直す羽は目めになった。目立たねえように、二、三日洞穴ほらあなに閉じこもって様子を見てたんだ。しかし、どうも形勢けいせいはよくねえ」