「ゴルゴマスはまた首を刎はねたの」ハーマイオニーは気味悪そうに言った。
「いいや」ハグリッドが言った。「そんならよかったんだが」
「どういうこと」
「まもなく、やつが全部の魔法使いに逆さからっていたっちゅうわけではねえことがわかった――俺おれたちにだけだった」
「死し喰くい人びと」ハリーの反応はんのうは早かった。
「そうだ」ハグリッドが暗い声で言った。「ガーグに贈おくり物ものを持って、毎日二人が来とったが、やつは連中を逆さかさ吊づりにはしてねえ」
「どうして死喰い人だってわかったの」ロンが聞いた。
「連中の一人に見覚えがあったからだ」ハグリッドが唸うなった。「マクネア、憶おぼえとるか バックビークを殺すのに送られてきたやつだ。殺さつ人じん鬼きよ、やつは。ゴルゴマスとおんなじぐれえ殺すのが好きなやつだし、気が合うわけだ」
「それで、マクネアが『例のあの人』の味方につくようにって、巨人を説とき伏ふせたの」
ハーマイオニーが絶ぜつ望ぼう的てきな声で言った。
「ドゥ、ドゥ、ドゥ。急せくな、ヒッポグリフよ。話は終っちゃいねえ」
ハグリッドが憤然ふんぜんとして言った。最初は、三人に何も話したくないはずだったのに、いまやハグリッドは、かなり楽しんでいる様子だった。
「オリンペと俺とでじっくり話し合って、意見が一致いっちした。ガーグが『例のあの人』に肩入かたいれしそうな様子だからっちゅうて、みんながみんなそうだとはかぎらねえ。そうじゃねえ連中を説き伏せなきゃなんねえ。ゴルゴマスをガーグにしたくなかった連中をな」
「どうやって見分けたんだい」ロンが聞いた。
「そりゃ、しょっちゅうこてんぱんに打ぶちのめされてた連中だろうが」ハグリッドは辛抱しんぼう強く説明した。「ちーっと物のわかる連中は、俺たちみてえに谷の周りの洞穴に隠れて、ゴルゴマスに出会わねえようにしてた。そんで、俺たちは、夜のうちに洞穴を覗のぞいて歩いて、その連中を説得せっとくしてみようと決めたんだ」
「巨人を探して、暗い洞穴を覗いて回ったの」
ロンは恐れと尊敬そんけいの入り交まじった声で聞いた。
「いや、俺たちが心配したのは、巨人のほうじゃねえ」ハグリッドが言った。「むしろ、死喰い人のほうが気になった。ダンブルドアが、できれば死喰い人にはかかわるなと、前々から俺たちにそう言いなすった。ところが、連中は俺たちがそのあたりにいることを知っていたから厄介やっかいだった――大方おおかた、ゴルゴマスが連中に俺たちのことを話したんだろう。夜、巨人が眠っている間に俺たちが洞穴に忍び込もうとしとったとき、マクネアのやつらは俺たちを探して山ん中をこっそり動き回っちょったわ。オリンペがやつらに飛びかかろうとするのを止めるのに苦労したわい」
ハグリッドのぼうぼうとしたひげの口元がきゅっと持ち上がった。
「オリンペはさかんに連中を攻撃こうげきしたがってな……怒るとすごいぞ、オリンペは……そうとも、火のようだ……うん、あれがオリンペのフランス人の血なんだな……」