ハグリッドは夢見るような目つきで暖炉だんろの火を見つめた。ハリーは、三十秒間だけハグリッドが思い出に浸ひたるのを待ってから、大きな咳払せきばらいをした。
「それから、どうなったの 反対派の巨人たちには近づけたの」
「なに ああ……あ、うん。そうだとも。カーカスが殺されてから三日目の夜、俺おれたちは隠れていた洞穴ほらあなからこっそり抜け出して、谷のほうを目指した。死し喰くい人びとの姿に目を凝こらしながらな。洞穴に二、三ヵ所入ってみたが、だめだ――そんで、六つ目ぐれえで、巨人が三人隠れてるのを見つけた」
「洞穴がぎゅうぎゅうだったろうな」ロンが言った。
「立錐りっすいどころか、立ちニーズルの余よ地ちもなかったな」ハグリッドが言った。
「こっちの姿を見て、襲おそってこなかった」ハーマイオニーが聞いた。
「まともな体だったら襲ってきただろうな」ハグリッドが言った。「だが、連中はひどく怪け我がしとった。三人ともだ。ゴルゴマス一味いちみに気を失うまで叩たたきのめされて、正しょう気きづいたときに洞穴を探して、一番近くにあった穴に這はい込こんだ。とにかく、そのうちの一人がちっとは英語ができて、ほかの二人に通訳つうやくして、そんで、俺たちの言いたいことは、まあまあ伝わったみてえだった。そんで、俺たちは、傷きずついた連中を何回も訪たずねた……たしか、一度は六人か七人ぐれえが納得なっとくしてくれたと思う」
「六人か七人」ロンが熱っぽく言った。「そりゃ、悪くないよ――その巨人たち、ここに来るの 僕たちと一いっ緒しょに『例のあの人』と戦うの」
しかし、ハーマイオニーは聞き返した。「ハグリッド、『一度は』って、どういうこと」
ハグリッドは悲しそうにハーマイオニーを見た。
「ゴルゴマスの一味がその洞穴を襲しゅう撃げきした。生き残ったやつらも、それからあとは俺たちにかかわろうとせんかった」
「じゃ……じゃ、巨人は一人も来ないの」ロンががっかりしたように言った。
「来ねえ」
ハグリッドは深いため息をつき、生肉を裏返うらがえして冷たいほうを顔に当てた。
「だが、俺たちはやるべきことをやった。ダンブルドアの言葉も伝えたし、それに耳を傾けた巨人も何人かはいた。そんで、何人かはそれを憶おぼえとるだろうと思う。たぶんとしか言えねえが、ゴルゴマスのところにいたくねえ連中が、山から下りたら、そんで、その連中が、ダンブルドアが友ゆう好こう的てきだっちゅうことを思い出すかもしれん……その連中が来るかもしれん」
雪がすっかり窓を覆おおっていた。ハリーは、ローブの膝ひざのところがぐっしょり濡ぬれているのに気づいた。ファングが膝ひざに頭を載のせて、涎よだれを垂たらしていた。