「ええか」ハグリッドはクラスを見渡して浮き浮きと言った。「よし、さーて、森の探索たんさくは五年生まで楽しみに取っておいた。連中を自然な生せい息そく地ちで見せてやろうと思ってな。さあ、今日勉強するやつは、珍めずらしいぞ。こいつらを飼かい馴ならすのに成功したのは、イギリスではたぶん俺おれだけだ」
「それで、本当に飼い馴らされてるって、自信があるのかい」マルフォイが、ますます恐怖を露あらわにした声で聞いた。「なにしろ、野蛮やばんな動物をクラスに持ち込んだのはこれが最初じゃないだろう」
スリザリン生がザワザワとマルフォイに同意した。グリフィンドール生の何人かも、マルフォイの言うことは的まとを射いているという顔をした。
「もちろん飼かい馴ならされちょる」ハグリッドは顔をしかめ、肩にした牛の死骸しがいを少し揺ゆすり上げた。
「それじゃ、その顔はどうしたんだい」マルフォイが問い詰つめた。
「おまえさんにゃ関係ねえ」ハグリッドが怒ったように言った。「さあ、バカな質問が終ったら、俺おれについて来い」
ハグリッドはみんなに背を向け、どんどん森へ入って行った。誰もあとについて行きたくないようだった。ハリーはロンとハーマイオニーをちらりと見た。二人ともため息をついたが、頷うなずいた。三人は他のみんなの先頭に立って、ハグリッドの跡あとを追った。
ものの十分も歩くと、木が密生みっせいして夕暮れどきのような暗い場所に出た。地面には雪も積もっていない。ハグリッドはフーッと言いながら牛の半身はんみを下ろし、後ろに下がって生徒と向き合った。ほとんどの生徒が、木から木へと身を隠しながらハグリッドに近づいてきて、いまにも襲おそわれるかのように神経しんけいを尖とがらせて、周りを見回していた。
「集まれ、集まれ」ハグリッドが励はげますように言った。「さあ、あいつらは肉の臭いに引かれてやってくるぞ。だが、俺のほうでも呼んでみる。あいつら、俺だってことを知りたいだろうからな」
ハグリッドは後ろを向き、もじゃもじゃ頭を振って、髪かみの毛を顔から払い退のけ、甲高かんだかい奇き妙みょうな叫さけび声を上げた。その叫びは、怪かい鳥ちょうが呼び交かわす声のように、暗い木々の間にこだました。誰も笑わなかった。ほとんどの生徒は、恐ろしくて声も出ないようだった。