「あの腐くされ、嘘うそつき、根性曲がり、怪かい獣じゅう婆ばばぁ」
三十分後、来るときに掘ほった雪道をたどって城に帰る道々みちみち、ハーマイオニーが気炎きえんを吐はいた。
「あの人が何を目論もくろんでるか、わかる 混血こんけつを毛嫌けぎらいしてるんだわ――ハグリッドをうすのろのトロールか何かみたいに見せようとしてるのよ。お母さんが巨人だというだけで――それに、ああ、不当だわ。授業は悪くなかったのに――そりゃ、また『尻しっ尾ぽ爆ばく発はつスクリュート』なんかだったら……でもセストラルは大だい丈じょう夫ぶ――ほんと、ハグリッドにしては、とってもいい授業だったわ」
「アンブリッジはあいつらが危険生物だって言ったけど」ロンが言った。
「そりゃ、ハグリッドが言ってたように、あの生き物はたしかに自じ己こ防ぼう衛えいするわ」ハーマイオニーがもどかしげに言った。「それに、グラブリー‐プランクみたいな先生だったら、普通はいもり試験まではセストラルみたいな生物を見せたりしないでしょうね。でも、ねえ、あの馬、本当におもしろいと思わない 見える人と見えない人がいるなんて 私にも見えたらいいのに」
「そう思う」ハリーが静かに聞いた。
ハーマイオニーが、突然はっとしたような顔をした。
「ああ、ハリー――ごめんなさい――ううん、もちろんそうは思わない――なんてばかなことを言ったんでしょう」
「いいんだ」ハリーが急いで言った。「気にするなよ」
「ちゃんと見える人が多かったのには驚おどろいたな」ロンが言った。「クラスに三人も――」
「そうだよ、ウィーズリー。いまちょうど話してたんだけど」意地の悪い声がした。雪で足音が聞こえなかったらしい。マルフォイ、クラッブ、ゴイルが三人のすぐ後ろを歩いていた。
「君が誰か死ぬところを見たら、少しはクアッフルが見えるようになるかな」
マルフォイ、クラッブ、ゴイルは、三人を押し退のけて城に向かいながらゲラゲラ笑い、突然「ウィーズリーこそ我が王者」を合がっ唱しょうしはじめた。ロンの耳が真まっ赤かになった。
「無む視し。とにかく無視」ハーマイオニーが呪じゅ文もんを唱となえるように繰くり返しながら、杖つえを取り出してまた「熱風ねっぷうの魔法」をかけ、温室までの新雪しんせつを溶とかして歩きやすい道を作った。