ハーマイオニーはため息をつくと、羽根ペンを置いた。
「あのね、チョウは当然、とっても悲しんでる。セドリックが死んだんだもの。でも、混乱こんらんしてると思うわね。だって、チョウはセドリックが好きだったけど、いまはハリーが好きなのよ。それで、どっちが本当に好きなのかわからないんだわ。それに、そもそもハリーにキスするなんて、セドリックの思い出に対する冒涜ぼうとくだと思って、自分を責せめてるわね。それと、もしハリーとつき合いはじめたら、みんながどう思うだろうって心配して。その上、ハリーに対する気持がいったい何なのか、たぶんわからないのよ。だって、ハリーはセドリックが死んだときにそばにいた人間ですもの。だから、何もかもごっちゃになって、辛つらいのよ。ああ、それに、このごろひどい飛び方だから、レイブンクローのクィディッチ・チームから放ほうり出されるんじゃないかって恐れてるみたい」
演説えんぜつが終ると、呆ぼう然ぜん自じ失しつの沈ちん黙もくが撥はね返ってきた。やがてロンが口を開いた。
「そんなにいろいろ一度に感じてたら、その人、爆発ばくはつしちゃうぜ」
「誰かさんの感情が、茶さじ一いっ杯ぱい分しかないからといって、みんながそうとはかぎりませんわ」ハーマイオニーは皮肉ひにくっぽくそう言うと、また羽は根ねペンを取った。
「彼女のほうが仕し掛かけてきたんだ」ハリーが言った。「僕ならできなかった――チョウがなんだか僕のほうに近づいてきて――それで、その次は僕にしがみついて泣いてた――僕、どうしていいかわからなかった――」
「そりゃそうだろう、なあ、おい」ロンは、考えただけでもそりゃ大変なことだという顔をした。
「ただやさしくしてあげればよかったのよ」ハーマイオニーが心配そうに言った。「そうしてあげたんでしょ」
「うーん」バツの悪いことに、顔が火ほ照てるのを感じながら、ハリーが言った。「僕、なんていうか――ちょっと背中をポンポンて叩たたいてあげた」
ハーマイオニーはやれやれという表情をしないよう、必死で抑おさえているような顔をした。
「まあね、それでもまだましだったかもね」ハーマイオニーが言った。「また彼女に会うの」
「会わなきゃならないだろ」ハリーが言った。「だって、ディーエイの会合かいごうがあるだろ」
「そうじゃなくて」ハーマイオニーが焦じれったそうに言った。
ハリーは何も言わなかった。ハーマイオニーの言葉で、恐ろしい新しん展てん開かいの可能性が見えてきた。チョウと一いっ緒しょにどこかに行くことを想像してみた――ホグズミードとか――何時間もチョウと二人っきりだ。さっきあんなことがあったあと、もちろんチョウは僕がデートに誘さそうことを期待していただろう……そう考えると、ハリーは胃袋が締しめつけられるように痛んだ。