そしてハリーは、自分が見たことを全員に話して聞かせた。ただ、話を変えて、蛇へびが襲おそったとき、自分は蛇自身の目からではなく、傍かたわらで見ていたような言い方をした。ロンはまだ蒼そう白はくだったが、ちらりとハリーを見た。しかし、何も言わなかった。話し終えても、フレッド、ジョージ、ジニーは、まだしばらくハリーを見つめていた。気のせいか、三人がどこか非難ひなんするような目つきをしているように思えた。そうなんだ、僕が攻撃こうげきを目もく撃げきしただけでみんなが非難するのなら、そのとき自分は蛇へびの中にいたなんて言わなくてよかった。
「ママは来てる」フレッドがシリウスに聞いた。
「たぶんまだ、何が起こったかさえ知らないだろう」シリウスが言った。「アンブリッジの邪魔じゃまが入る前に君たちを逃がすことが大事だったんだ。いまごろはダンブルドアが、モリーに知らせる手配をしているだろう」
「聖せいマンゴに行かなくちゃ」ジニーが急せき込こんで言った。兄たちを見回したが、もちろんみんなパジャマ姿だ。「シリウス、マントか何か貸かしてくれない」
「まあ、待て。聖マンゴにすっ飛んで行くわけにはいかない」シリウスが言った。
「なんでだ。俺おれたちは行くさ。行きたいんだ、聖マンゴに」フレッドが強ごう情じょうな顔をした。「俺たちの親父おやじだ」
「アーサーが襲おそわれたことを、病院から奥さんにも知らせていないのに、君たちが知っているなんて、じゃあ、どう説明するつもりだ」
「そんなことどうでもいいだろ」ジョージがむきになった。
「よくはない。何百キロも離はなれたところの出来事をハリーが見ているという事実に、注意を引きたくない」シリウスが声を荒あららげた。「そういう情報を、魔法省がどう解かい釈しゃくするか、君たちにはわかっているのか」
フレッドとジョージは、魔法省が何をどうしようが知ったことかという顔をした。ロンは血ちの気けのない顔で黙だまっていた。
ジニーが言った。「誰かほかの人が教えてくれたかもしれないし……ハリーじゃなくて、どこか別のところから聞いたかもしれないじゃない」
「誰から」シリウスがもどかしげに言った。「いいか、君たちの父さんは、騎き士し団だんの任務にんむ中に負ふ傷しょうしたんだ。それだけでも十分状況が怪あやしいのに、その上、子供たちが事件直後にそれを知っていたとなれば、ますます怪しい。君たちが騎士団に重大な損害そんがいを与えることにもなりかねない――」
「騎士団なんかクソ食らえ」フレッドが大声を出した。
「俺たちの親父が死にかけてるんだ」ジョージも叫さけんだ。
「君たちの父さんは、自分の任務を承しょう知ちしていた。騎士団のためにも、君たちが事ことを台無だいなしにしたら、父さんが喜ぶと思うか」シリウスも同じぐらいに怒っていた。「まさにこれだ――だから君たちは騎士団に入れないんだ――君たちはわかっていない――世の中には死んでもやらなければならないことがあるんだ」
「口で言うのは簡単さ。ここに閉じこもって」フレッドが怒ど鳴なった。「そっちの首は懸かかってないじゃないか」