「朝食だ」シリウスが勢いよく立ち上がり、うれしそうに大声で言った。「あのいまいましいしもべ妖よう精せいはどこだ クリーチャー クリーチャー」
しかしクリーチャーは呼び出しに応おうじなかった。
「それなら、それでいい」シリウスはそう呟つぶやくと、人数を数えはじめた。「それじゃ、朝食は――ええと――七人か……ベーコンエッグだな。それと紅茶にトーストと――」
ハリーは手伝おうと竈かまどのほうに急いだ。ウィーズリー一家の幸せを邪魔じゃましてはいけないと思った。それに、ウィーズリーおばさんから、自分の見たことを話すようにと言われる瞬しゅん間かんが怖こわかった。ところが、食しょっ器き棚だなから皿を取り出すや否いなや、おばさんがハリーの手からそれを取り上げ、ハリーをひしと抱き寄せた。
「ハリー、あなたがいなかったらどうなっていたかわからないわ」おばさんはくぐもった声で言った。「アーサーを見つけるまでに何時間も経たっていたかもしれない。そうしたら手遅ておくれだったわ。でも、あなたのおかげで命が助かったし、ダンブルドアはアーサーがなぜあそこにいたかを、うまく言い繕つくろう話を考えることもできたわ。そうじゃなかったら、どんなに大変なことになっていたか。かわいそうなスタージスみたいに……」
ハリーはおばさんの感謝かんしゃにいたたまれない気持だった。幸いなことに、おばさんはすぐハリーを放はなし、シリウスに向かって、一ひと晩ばん中じゅう子供たちを見ていてくれたことの礼を述べた。シリウスは役に立ってうれしいし、ウィーズリー氏が入院中は、全員がこの屋敷やしきに留まってほしいと答えた。
「まあ、シリウス、とてもありがたいわ……アーサーはしばらく入院することになると言われたし、なるべく近くにいられたら助かるわ……その場合は、もちろん、クリスマスをここで過ごすことになるかもしれないけれど」
「大勢のほうが楽しいよ」
シリウスが心からそう思っている声だったので、ウィーズリーおばさんはシリウスに向かってにっこりし、手早くエプロンを掛かけて朝食の支度したくを手伝いはじめた。
「シリウスおじさん」ハリーは切せっ羽ぱ詰つまった気持で囁ささやいた。「ちょっと話があるんだけど、いい あの――いますぐ、いい」