ハリーは暗い食しょく料りょう庫こに入って行った。シリウスがついて来た。ハリーは何の前置きもせずに、名な付づけ親おやに、自分の見た光景こうけいを詳くわしく話して聞かせた。自分自身がウィーズリー氏を襲おそった蛇へびだったことも話した。
一息ひといきついたとき、シリウスが聞いた。「そのことをダンブルドアに話したか」
「うん」ハリーは焦じれったそうに言った。「だけど、ダンブルドアはそれがどういう意味なのか教えてくれなかった。まあ、ダンブルドアはもう僕に何にも話してくれないんだけど」
「何か心配するべきことだったら、きっと君に話してくれていたはずだ」シリウスは落ち着いていた。
「だけど、それだけじゃないんだ」ハリーがほとんど囁ささやきに近い小声で言った。「シリウス、僕……僕、頭がおかしくなってるんじゃないかと思うんだ。ダンブルドアの部屋で、移動ポートキーに乗る前だけど……ほんの一いっ瞬しゅん、僕は蛇へびになったと思った。そう感じたんだ――ダンブルドアを見たとき、傷きず痕あとがすごく痛くなった――シリウスおじさん、僕、ダンブルドアを襲おそいたくなったんだ」
ハリーには、シリウスの顔のほんの一部しか見えなかった。あとは暗くら闇やみだった。
「幻まぼろしを見たことが尾を引いていたんだろう。それだけだよ」シリウスが言った。「夢だったのかどうかはわからないが、まだそのことを考えていたんだよ」
「そんなんじゃない」ハリーは首を振った。「何かが僕の中で伸び上がったんだ。まるで体の中に蛇がいるみたいに」
「眠らないと」シリウスがきっぱりと言った。「朝食を食べたら、上に行って休みなさい。昼食のあとで、みんなと一いっ緒しょにアーサーの面会に行けばいい。ハリー、君はショックを受けているんだ。単に目もく撃げきしただけのことを、自分のせいにして責せめている。それに、君が目撃したのは幸運なことだったんだ。そうでなけりゃ、アーサーは死んでいたかもしれない。心配するのはやめなさい」
シリウスはハリーの肩をポンポンと叩たたき、食しょく料りょう庫こから出て行った。ハリーは一人り暗がりに取り残された。