ハリー以外のみんなが午前中を寝て過ごした。ハリーは、ロンと一緒に夏休み最後の数週間を過ごした寝室しんしつに上がって行った。ロンのほうはベッドに潜もぐり込こむなりたちまち眠り込んだが、ハリーは服を着たまま金きん属ぞく製せいの冷たいベッドの背もたれに寄より掛かかり、背中を丸め、わざと居い心ごこ地ちの悪い姿勢しせいを取って、眠り込むまいとした。眠るとまた蛇になるのではないか、目覚めたときに、ロンを襲ってしまったとか、誰かを襲おうと家の中を這はいずり回っていたことに気づくのではないかと思うと、恐ろしかった。
ロンが目覚めたとき、ハリーもよく寝て気持よく目覚めたようなふりをした。昼食の最中に全員のトランクがホグワーツから到とう着ちゃくし、マグルの服を着て聖せいマンゴに出かけられるようになった。ローブを脱いでジーンズとシャツに着き替がえながら、ハリー以外のみんなは、うれしくてはしゃぎ、饒じょう舌ぜつになっていた。ロンドンの街中まちなかをつき添そって行くトンクスとマッド‐アイが到着したときには、全員が大喜びで迎むかえ、マッド‐アイが魔法の目を隠すのに目深まぶかに被かぶった山やま高たか帽ぼうを笑った。トンクスは、また鮮あざやかなピンク色の短い髪かみをしていたが、地下鉄ではトンクスよりマッド‐アイのほうが間違いなく目立つと、冗じょう談だん抜きでみんながマッド‐アイに請うけ合った。
トンクスは、ウィーズリー氏が襲われた光景こうけいをハリーが見たことに、とても興きょう味みを持ったが、ハリーはまったくそれを話題にする気がなかった。
「君の血筋ちすじに、『予よ見けん者しゃ』はいないの」ロンドン市内に向かう電車に並んで腰掛こしかけ、トンクスが興きょう味み深げにハリーに聞いた。
「いない」ハリーはトレローニー先生のことを考え、侮ぶ辱じょくされたような気がした。
「違うのか」トンクスは考え込むように言った。「違うな。君のやってることは、厳密げんみつな予言っていうわけじゃないものね。つまり、君は未来を見ているわけじゃなくて、現在を見てるんだ……変だね でも、役に立つけど……」
ハリーは答えなかった。うまい具合に、次の駅でみんな電車を降おりた。ロンドンの中心部にある駅だった。電車を降りるどさくさに紛まぎれ、ハリーは、先頭に立ったトンクスと自分の間にフレッドとジョージを割り込ませることができた。みんながトンクスについてエスカレーターを上がった。ムーディはしんがりで、山やま高たか帽ぼうを斜ななめ目深まぶかに被かぶり、節ふしくれだった手を片方かたほう、ボタンの間からマントの懐ふところに差し込んで杖つえを握にぎり締しめ、コツッコツッと歩いてきた。ハリーは、隠れた目がじっと自分を見ているような感じがした。夢のことをこれ以上聞かれないように、ハリーはマッド‐アイに、聖せいマンゴがどこに隠されているかと質問した。