「こっちよ」隅の魔法戦士が鳴らす鐘の音に負けない声で、ウィーズリーおばさんが呼んだ。みんながおばさんについて、列に並んだ。列の前には「案あん内ない係がかり」と書いたデスクがあり、ブロンドのふっくらした魔女が座っていた。その後ろには、壁かべ一面に掲示けいじやらポスターが貼はってある。
鍋なべが不潔ふけつじゃ、薬も毒よ
無む許きょ可かの解げ毒どく剤ざいは無む解げ毒どく剤ざい
長い銀色の巻き毛の魔女の大きな肖しょう像ぞう画がも掛かかっていて、説明がついている。
ディリス・ダーウェント
聖せいマンゴの癒者いしゃ 一七二二―一七四一
ホグワーツ魔法魔術学校校長 一七四一―一七六八
肖像画のディリスは、ウィーズリー一行いっこうを数えているような目で見ていた。ハリーと目が合うと、ちょこりとウィンクして、額がくの縁へりのほうに歩いて行き、姿を消した。
一方いっぽう、列の先頭の若い魔法使いは、その場でへんてこなジグ・ダンスを踊おどりながら、痛そうな悲鳴ひめいの合間あいまに、案内魔女に苦難くなんの説明をしていた。
「問題はこの――イテッ――兄貴あにきにもらった靴くつでして――うっ――食いつくんですよ――アイタッ――足に――靴を見てやってください。きっとなんかの――ああううう――呪のろいがかかってる。どうやっても――あああああううう――脱ぬげないんだ」片足かたあしでぴょん、別の足でぴょんと、まるで焼けた石炭の上で踊っているようだった。
「あなた、別に靴のせいで字が読めないわけではありませんね」ブロンドの魔女は、イライラとデスクの左側の大きな掲示けいじを指差した。「あなたの場合は『呪文性損傷』。五階。ちゃんと『病びょう院いん案あん内ない』に書いてあるとおり。はい、次」
その魔法使いが、よろけたり、踊り跳はねたりしながら脇わきに避よけ、ウィーズリー一家が数歩前に進んだ。ハリーは「病院案内」を読んだ。
一階……物ぶっ品ぴん性せい事じ故こ
大おお鍋なべ爆ばく発はつ、杖つえ逆ぎゃく噴ふん射しゃ、箒ほうき衝しょう突とつ など
二階……生せい物ぶつ性せい傷しょう害がい
噛かみ傷きず、刺さし傷、火傷やけど、とげ埋うめ込こみ など
三階……魔バクテリア性せい疾しっ患かん
感かん染せん症しょう龍りゅう痘とうなど、消しょう滅めつ症しょう、巻まき黴かび など
四階……薬剤やくざい・植しょく物ぶつ性せい中ちゅう毒どく
湿疹しっしん、嘔吐おうと、抑よく制せい不ふ能のうクスクス笑い など
五階……呪じゅ文もん性せい損そん傷しょう
解かい除じょ不ふ能のう性せい呪のろい、呪詛じゅそ、不ふ適てき正せい使し用よう呪じゅ文もん など
六階……外がい来らい者しゃ喫きっ茶さ室しつ・売店ばいてん
何階かわからない方かた、通常の話ができない方、
どうしてここにいるのか思い出せない方は、
案内魔女がお手伝いいたします。
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