「とにかくだ」おじさんが声を張り上げた。「こんどはウィリーのやつ、『噛みつきドア取っ手』をマグルに売りつけているところを捕つかまった。こんどこそ逃げられるものか。なにしろ新聞によると、マグルが二人、指を失なくして、いま、聖せいマンゴで、救きゅう急きゅう骨こつ再さい生せい治ち療りょうと記き憶おく修しゅう正せいを受けているらしい。どうだい、マグルが聖マンゴにいるんだ。どの病びょう棟とうかな」
おじさんは、どこかに掲示けいじがないかと、熱心にあたりを見回した。
「『例のあの人』が蛇を持ってるって、ハリー、君、そう言わなかった」フレッドが、父親の表情を窺うかがいながら聞いた。「巨大なやつ 『あの人』が復活した夜に、その蛇を見たんだろ」
「いい加減かげんになさい」ウィーズリーおばさんは不ふ機き嫌げんだった。「アーサー、マッド‐アイとトンクスが外で待ってるわ。あなたに面会したいの。それから、あなたたちは外に出て待っていなさい」おばさんが子供たちとハリーに向かって言った。「あとでまたご挨あい拶さつにいらっしゃい。さあ、行って」
みんな並んで廊下ろうかに戻った。マッド‐アイとトンクスが中に入り、病室のドアを閉めた。フレッドが眉まゆを吊つり上げた。
「いいさ」フレッドがポケットをゴソゴソ探さぐりながら、冷静れいせいに言った。「そうやってりゃいいさ。俺おれたちには何にも教えるな」
「これを探してるのか」ジョージが薄うす橙だいだい色いろのひもが絡からまったようなものをさし出した。
「わかってるねえ」フレッドがにやりと笑った。「聖せいマンゴが病びょう棟とうのドアに『邪魔じゃまよけ呪じゅ文もん』をかけているかどうか、見てみようじゃないか」
フレッドとジョージがひもを解ほどき、五本の「伸のび耳みみ」に分けた。二人が他の三人に配ったが、ハリーは受け取るのをためらった。
「取れよ、ハリー。君は親父おやじの命を救った。盗とう聴ちょうする権利があるやつがいるとすれば、まず君だ」
思わずにやりとして、ハリーはひもの端を受け取り、双子ふたごがやっているように耳に差し込んだ。
「オッケー。行け」フレッドが囁ささやいた。
薄橙色のひもは、痩やせた長い虫のように、ゴニョゴニョ這はって行き、ドアの下からクネクネ入り込んだ。最初は何も聞こえなかったが、やがて、ハリーは飛び上がった。トンクスの囁き声が、まるでハリーのすぐそばに立っているかのように、はっきり聞こえてきたのだ。