「……隈くまなく探したけど、蛇へびはどこにも見つからなかったらしいよ。アーサー、あなたを襲おそったあと、蛇は消えちゃったみたい……だけど、『例のあの人』は蛇が中に入れるとは期待してなかったはずだよね」
「わしの考えでは、蛇を偵察ていさつに送り込んだのだろう」ムーディの唸うなり声だ。「なにしろ、これまでは、まったくの不ふ首しゅ尾びに終っているだろうが うむ、やつは、立ち向かうべきものを、よりはっきり見ておこうとしたのだろう。アーサーがあそこにいなければ、蛇のやつはもっと時間をかけて見回ったはずだ。それで、ポッターは一いち部ぶ始し終じゅうを見たと言っておるのだな」
「ええ」ウィーズリーおばさんは、かなり不安そうな声だった。「ねえ、ダンブルドアは、ハリーがこんなことを見るのを、まるで待ち構かまえていたような様子なの」
「うむ、まっこと」ムーディが言った。「あのポッター坊主ぼうずは、何かおかしい。それは、わしら全員が知っておる」
「今朝、私がダンブルドアとお話したとき、ハリーのことを心配なさっているようでしたわ」ウィーズリーおばさんが囁ささやいた。
「むろん、心配しておるわ」ムーディが唸うなった。「あの坊主ぼうずは『例のあの人』の蛇へびの内側から事ことを見ておる。それが何を意味するか、ポッターは当然気づいておらぬ。しかし、もし『例のあの人』がポッターに取とり憑ついておるなら――」
ハリーは「伸のび耳みみ」を耳から引き抜いた。心臓が早鐘はやがねを打ち、顔に血が上った。ハリーはみんなを見回した。全員が、ひもを耳から垂たらしたまま、突然恐きょう怖ふに駆かられたように、じっとハリーを見ていた。