クリスマス・ランチを食べ終ると、ウィーズリー一家にハリーとハーマイオニーは、マッド‐アイとルーピンの護衛ごえいつきで、もう一度ウィーズリー氏の見み舞まいに行くことにしていた。クリスマス・プディングとトライフルのデザートに間に合う時間にやって来たマンダンガスは、病院行きのために車を一台「借りて」きていた。クリスマスには地下鉄が走っていないからだ。車は、ハリーの見るところ持もち主ぬしの了りょう解かいのもとに借り出されたとはとうてい思えなかったが、かつてウィーズリーおじさんが中ちゅう古このフォード・アングリアに魔法をかけたときと同じように、呪じゅ文もんで大きくなっていた。外側がわは普通ふつうの大きさなのに、運転するマンダンガスのほか十人が楽々乗り込めた。ウィーズリーおばさんは乗り込む前にためらった――マンダンガスを認めたくない気持と、魔法なしで移動するのはいやだという気持が戦っているのが、ハリーにはわかった――しかし、外が寒かったことと子供たちにせがまれたことで、ついに勝敗が決まった。おばさんは後こう部ぶ席せきのフレッドとビルの間に潔いさぎよく座り込んだ。
道路がとても空すいていたので、聖せいマンゴまでの旅はあっという間だった。人通りのない街路がいろに、病院を訪れるほんの数人の魔法使いや魔女がこそこそと入って行った。ハリーもみんなもそこで車を降おりた。マンダンガスは、みんなの帰りを待つのに、車を道の角に寄せた。一行いっこうは、緑のナイロン製エプロンドレスを着たマネキンが立っているショーウィンドウに向かって、ゆっくりと何気なく歩き、一人ずつウィンドウの中に入った。
受付ロビーは楽しいクリスマス気分に包まれていた。聖せいマンゴ病院を照らすクリスタルの球は、赤や金色に塗ぬられた輝かがやく巨大な玉飾たまかざりになっていた。戸口という戸口にはヒイラギが下がり、魔法の雪や氷柱つららで覆おおわれた白く輝くクリスマスツリーが、あちこちの隅すみでキラキラしていた。ツリーのてっぺんには金色に輝く星がついている。病院は、この前ハリーたちが来たときほど混こんではいなかった。ただし、待まち合あい室しつの真ん中あたりで、ハリーは、左の鼻の穴にみかんが詰つまった魔女に押し退けられた。
「家か庭てい内ないのいざこざなの え」ブロンドの案内魔女が、デスクの向こうでにんまりした。
「この手の患者かんじゃさんは、あなたで今日三人目よ……。呪じゅ文もん性せい損そん傷しょう。五階」
ウィーズリー氏はベッドにもたれ掛かかっていた。膝ひざに載のせた盆ぼんに、昼ちゅう食しょくの七しち面めん鳥ちょうの食べ残しがあり、なんだかバツの悪そうな顔をしていた。