ハリーの頭が思わずくるりと回った。一番奥の二つのベッドを覆おおったカーテンが開き、見舞い客が二人、ベッドの間の通路を歩いてきた。あたりを払う風貌ふうぼうの老魔女は、長い緑のドレスに、虫食いだらけの狐きつねの毛皮を纏まとい、尖とがった三角帽子ぼうしには紛まぎれもなく本物のハゲタカの剥製はくせいが載っている。後ろに従っているのは、打ちひしがれた顔の――ネビルだ。
突然すべてが読めた。ハリーは、奥のベッドに誰がいるのかがわかった。ネビルが誰にも気づかれず、質問も受けずにここから出られるようにと、他の三人の注意を逸そらす物を探して、ハリーは慌あわてて周りを見回した。しかし、ロンも「ロングボトム」の名前が聞こえて目を上げていた。ハリーが止める間もなく、ロンが呼びかけた。
「ネビル」
ネビルはまるで弾丸だんがんが掠かすめたかのように、飛び上がって縮ちぢこまった。
「ネビル、僕たちだよ」ロンが立ち上がって明るく言った。「ねえ、見た―― ロックハートがいるよ 君は誰のお見み舞まいなんだい」
「ネビル、お友達かえ」
ネビルのお祖ば母あさまが、四人に近づきながら、上品な口ぶりで聞いた。
ネビルは身の置き所がない様子だった。ぽっちゃりした顔に、赤あか紫むらさき色いろがさっと広がり、ネビルは誰とも目を合わせないようにしていた。ネビルのお祖母さまは、目を凝こらしてハリーを眺ながめ、皺しわだらけの鉤爪かぎづめのような手をさし出して握手あくしゅを求めた。
「おう、おう、あなたがどなたかは、もちろん存ぞんじてますよ。ネビルがあなたのことを大変褒ほめておりましてね」
「あ――どうも」ハリーが握手しながら言った。ネビルはハリーの顔を見ようとせず、自分の足元を見つめていた。顔の赤みがどんどん濃こくなっていた。
「それに、あなた方がたお二人は、ウィーズリー家の方かたですね」
ミセス・ロングボトムは、ロンとジニーに次々と、威風いふう堂々どうどう手をさし出した。
「ええ、ご両親を存ぞんじ上げておりますよ――もちろん親しいわけではありませんが――しかし、ご立派な方々です。ご立派な……そして、あなたがハーマイオニー・グレンジャーですね」
ハーマイオニーはミセス・ロングボトムが自分の名前を知っていたのでちょっと驚おどろいたような顔をしたが、臆おくせず握手した。
「ええ、ネビルがあなたのことは全部話してくれました。何度か窮きゅう地ちを救ってくださったのね この子はいい子ですよ」お祖母さまは、骨ばった鼻の上から、厳きびしく評ひょう価かするような目でネビルを見下ろした。「でも、この子は、口惜くちおしいことに、父親の才能を受け継つぎませんでした」そして、奥の二つのベッドのほうにぐいと顔を向けた。帽子ぼうしの剥製はくせいハゲタカが脅おどすように揺ゆれた。