十二番地の扉が背後でバタンと閉じた。一行いっこうはルーピンについて入口の階段を下りた。歩道に出たとき、ハリーは振り返った。両側の建物が横に張り出し、十二番地はその間に押しつぶされるようにどんどん縮ちぢんで見えなくなり、瞬まばたきする間にそこはもう消えていた。
「さあ、バスに早く乗るに越したことはないわ」トンクスが言った。広場のあちこちに目を走らせているトンクスの声が、ピリピリしているとハリーは思った。ルーピンがパッと右腕を上げた。
バーン。
ど派は手でな紫むらさき色いろの三階建てバスがどこからともなく一行いっこうの目の前に現れた。危あやうく近くの街灯がいとうにぶつかりそうになったが、街灯が飛び退のいて道を空あけた。
紫の制服せいふくを着た、痩やせてニキビだらけの、耳が大きく突き出た若者が、歩道にぴょんと飛び降おりて言った。「ようこそ、夜ナ――」
「はい、はい、わかってるわよ。ごくろうさん」トンクスが素早すばやく言った。「乗って、乗って、さあ――」
そして、トンクスはハリーを乗車ステップのほうへ押しやった。ハリーが前を通り過ぎるとき、車しゃ掌しょうがじろじろ見た。
「いやー――アリーだ――」
「その名前を大声で言ったりしたら、呪のろいをかけてあんたを消しょう滅めつさせてやるから」トンクスは、こんどはジニーとハーマイオニーを押しやりながら、低い声で脅おどすように言った。
「僕さ、一度こいつに乗ってみたかったんだ」ロンがうれしそうに乗り込み、ハリーのそばに来てキョロキョロした。
以前にハリーが「夜の騎士ナイトバス」に乗ったときは、夜で、三階とも真しん鍮ちゅうの寝台しんだいで一いっ杯ぱいだった。今回は早朝で、てんでんばらばらな椅子が詰つめ込まれ、窓際まどぎわにいい加減かげんに並べて置かれていた。バスがグリモールド・プレイスで急停車ていしゃしたときに、椅子がいくつかひっくり返ったらしい。何人かの魔法使いや魔女たちが、ブツブツ言いながら立ち上がりかけていた。誰かの買物袋がバスの端から端まで滑すべったらしく、カエルの卵たまごやら、ゴキブリ、カスタードクリームなど、気持の悪いごたごたが、床一面に散らばっていた。
「どうやら分かれて座らないといけないね」空あいた席を見回しながら、トンクスがきびきびと言った。「フレッドとジョージとジニー、後ろの席に座って……リーマスが一いっ緒しょに座れるわ」
トンクス、ハリー、ロン、ハーマイオニーは三階まで進み、一番前に二席と後ろに二席見つけた。車掌のスタン・シャンパイクが、興きょう味み津しん々しんで、後ろの席までハリーとロンにくっついてきた。ハリーが通り過ぎると、次々と顔が振り向き、ハリーが後部に腰掛こしかけると、全部の顔がまたパッと前を向いた。