「二人とも、元気か」ハグリッドはなんとか笑って見せようとしたが、せいぜい痛そうに顔をしかめたようにしか見えなかった。
「ハグリッド、大だい丈じょう夫ぶかい」レイブンクロー生のあとからドシンドシンと歩いて行くハグリッドを追って、ハリーが聞いた。
「大丈夫だいじょぶだ、だいじょぶだ」ハグリッドは何でもない風ふうを装よそおったが、見え透すいていた。片手かたてを気軽に振ったつもりが、通りがかったベクトル先生を掠かすめ、危あやうく脳のう震盪しんとうを起こさせるところだった。先生は肝きもを冷ひやした顔をした。「ほれ、ちょいと忙いそがしくてな。いつものやつだ――授業の準備――火トカゲが数匹、鱗うろこが腐くさってな――それと、停てい職しょく候こう補ほになった」ハグリッドが口ごもった。
「停職だって」ロンが大声を出したので、通りがかった生徒が何事かと振り返った。「ごめん――いや、あの――停職だって」ロンが声を落とした。
「ああ」ハグリッドが答えた。「ほんと言うと、こんなことになるんじゃねえかと思っちょった。おまえさんたちにゃわからんかったかもしれんが、あの査察ささつは、ほれ、あんまりうまくいかんかった……まあ、とにかく」ハグリッドは深いため息をついた。「火トカゲに、もうちいと粉こなトウガラシをすり込こんでやらねえと、こん次は尻尾しっぽがちょん切れっちまう。そんじゃな、ハリー……ロン……」
ハグリッドは玄げん関かんの扉とびらを出て、石段を下り、じめじめした校庭を重い足取りで去って行った。これ以上、あとどれだけ多くの悪い知らせに耐たえていけるだろうかと訝いぶかりながら、ハリーはその後ろ姿を見送った。