「たぶん病気の場合とおんなじじゃないかしら」ハリーがハーマイオニーとロンに打ち明けると、ハーマイオニーが心配そうに言った。「熱が出たりなんかするじゃない。病気はいったん悪くなってから良くなるのよ」
「スネイプとの練習のせいでひどくなってるんだ」ハリーはきっぱりと言った。「傷痕の痛みはもうたくさんだ。毎晩あの廊下を歩くのは、もううんざりしてきた」ハリーはいまいましげに額ひたいをごしごし擦こすった。「あの扉とびらが開いてくれたらなあ。扉を見つめて立っているのはもういやだ――」
「冗じょう談だんじゃないわ」ハーマイオニーが鋭するどく言った。「ダンブルドアは、あなたに廊下ろうかの夢なんか見ないでほしいのよ。そうじゃなきゃ、スネイプに『閉へい心しん術じゅつ』を教えるように頼んだりしないわ。あなた、もう少し一いっ所しょ懸命けんめい練習しなきゃ」
「ちゃんとやってるよ」ハリーは苛立いらだった。「君も一度やってみろよ――スネイプが頭の中に入り込もうとするんだ――楽しくてしょうがないってわけにはいかないだろ」
「もしかしたら……」ロンがゆっくりと言った。
「もしかしたらなんなの」ハーマイオニーがちょっと噛かみつくように言った。
「ハリーが心を閉じられないのは、ハリーのせいじゃないかもしれない」ロンが暗い声で言った。
「どういう意味」ハーマイオニーが聞いた。
「うーん。スネイプが、もしかしたら、本気でハリーを助けようとしていないんじゃないかって……」
ハリーとハーマイオニーはロンを見つめた。ロンは意味ありげな沈んだ目で、二人の顔を交互こうごに見た。
「もしかしたら」ロンがまた低い声で言った。「ほんとは、あいつ、ハリーの心をもう少し開こうとしてるんじゃないかな……そのほうが好こう都つ合ごうだもの、『例のあの――』」
「やめてよ、ロン」ハーマイオニーが怒った。「何度スネイプを疑えば気がすむの それが一度でも正しかったことがある ダンブルドアはスネイプを信じていらっしゃるし、スネイプは騎き士し団だんのために働いている。それで十分なはずよ」
「あいつ、死し喰くい人びとだったんだぜ」ロンが言い張った。「それに、本当にこっちの味方になったっていう証しょう拠こを見たことがないじゃないか」
「ダンブルドアが信用しています」ハーマイオニーが繰くり返した。「それに、ダンブルドアを信じられないなら、私たち、誰も信じられないわ」