リータはしばらく二人を見つめていたが、やがてけたたましく笑い出した。
「『ザ・クィブラー』だって」リータはゲラゲラ笑いながら言った。「ハリーの話が『ザ・クィブラー』に載のったら、みんながまじめに取ると思うざんすか」
「そうじゃない人もいるでしょうね」ハーマイオニーは平然へいぜんとしていた。「だけど、アズカバン脱獄だつごくの『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』版にはいくつか大きな穴があるわ。何が起こったのか、もっとましな説明はないものかって考えている人は多いと思うの。だから、別な筋書すじがきがあるとなったら、それが載っているのが、たとえ――」ハーマイオニーは横目でちらりとルーナを見た。「たとえ――その、異い色しょくの雑誌でも――読みたいという気持が相当強いと思うわ」
リータはしばらく何も言わなかった。ただ、首を少し傾かしげて、油断ゆだんなくハーマイオニーを見ていた。
「よござんしょ。仮かりにあたくしが引き受けるとして」リータが出し抜けに言った。「どのくらいお支払いいただけるんざんしょ」
「パパは雑誌の寄き稿こう者しゃに支払いなんかしてないと思うよ」ルーナが夢見るように言った。「みんな名誉めいよだと思って寄稿するんだもン。それに、もちろん、自分の名前が活字になるのを見たいからだよ」
リータ・スキーターは、またしても口の中で「臭しゅう液えき」の強きょう烈れつな味がしたような顔になり、ハーマイオニーに食ってかかった。
「ギャラなしでやれと」
「ええ、まあ」ハーマイオニーは飲み物を一口啜すすり、静かに言った。「さもないと、よくおわかりだと思うけど、私、あなたが未み登とう録ろくの『動物もどき』だって、然しかるべきところに通報つうほうするわよ。もっとも、『予言者新聞』は、あなたのアズカバン囚しゅう人じん日記にはかなりたくさん払ってくれるかもしれないわね」
リータは、ハーマイオニーの飲み物に飾かざってある豆まめ唐から傘かさをひっつかんで、その鼻の穴に押し込んでやれたらどんなにすーっとするか、という顔をした。
「どうやらあんまり選択せんたくの余よ地ちはなさそうざんすね」リータの声が少し震ふるえていた。リータは再びワニ革がわハンドバッグを開き、羊よう皮ひ紙しを一枚取り出し、自じ動どう速そっ記き羽は根ねペンを構かまえた。
「パパが喜ぶわ」ルーナが明るく言った。リータの顎あごの筋肉きんにくがひくひく痙攣けいれんした。
「さあ、ハリー」ハーマイオニーがハリーに話しかけた。「大たい衆しゅうに真実を話す準備ができた」
「まあね」ハリーの前に置いた羊皮紙の上に、リータが自動速記羽根ペンを立たせ、バランスを取って準備するのを眺ながめながら、ハリーが言った。
「それじゃ、リータ、やってちょうだい」グラスの底からチェリーを一ひと粒つぶ摘つまみ上げながら、ハーマイオニーが落ち着きはらって言った。