「アンジェリーナがまだロンの退部たいぶを許さないの」ハリーの心を読んだかのように、ジニーが言った。「ロンに力があるのはわかってるって、アンジェリーナはそう言うの」
ハリーは、アンジェリーナがロンを信頼しんらいしているのがうれしかった。しかし、同時に、本当はロンを退部させてやるほうが親切ではないかとも思った。ロンが競技場を去るとき、またしてもスリザリン生が悦えつに入って、「♪ウィーズリーは我が王者おうじゃ」の大だい合がっ唱しょうで見送ったのだった。スリザリンは、いまや、クィディッチ杯はいの最さい有ゆう力りょく候こう補ほだった。
フレッドとジョージがぶらぶらやって来た。
「俺おれ、あいつをからかう気にもなれないよ」ロンの打うち萎しおれた姿を見ながら、フレッドが言った。「ただし……あいつが十四回目のミスをしたとき――」フレッドは上向きで犬掻いぬかきをするように、両腕をむちゃくちゃに動かした。「――まあ、これはパーティ用に取っておくか、な」
それからまもなく、ロンはのろのろと寝室しんしつに向かった。ロンの気持を察さっして、ハリーは少し時間をずらして寝室に上がっていった。ロンがそうしたいと思えば、寝たふりができるようにと思ったのだ。案の定じょう、ハリーが寝室に入ったとき、ロンのいびきは、本物にしては少し大きすぎた。
ハリーは試合のことを考えながらベッドに入った。傍はたで見ているのは、何とも歯痒はがゆかった。ジニーの試合ぶりはなかなかのものだったが、自分がプレイしていたら、もっと早くスニッチを捕とらえられたのに……。スニッチがカークの踵かかとのあたりをひらひら飛んでいた、あの一いっ瞬しゅんにジニーが逡巡ためらわなかったら、グリフィンドールの勝利を掠かすめ取ることができたろうに。
アンブリッジはハリーやハーマイオニーより数列下に座っていた。一度か二度、べったり腰を下ろしたまま、振り返ってハリーを見た。ガマガエルのような口が横に広がり、ハリーには、いい気味だとほくそ笑んでいるように見えた。暗くら闇やみの中に横たわり、思い出すだにハリーは怒りで熱くなった。しかし、その数分後には、寝る前にすべての感情を無にすべきだったと思い出した。スネイプが「閉へい心しん術じゅつ」の特訓とっくんのあと、いつもハリーにそう指示していたのだ。
ハリーは一、二分努力してみたが、アンブリッジのことを思い出した上にスネイプのことを考えると、怨念おんねんが強まるばかりだった。気がつくと、むしろ自分がこの二人をどんなに毛嫌けぎらいしているかに気持が集中していた。ロンのいびきがだんだん弱くなり、ゆっくりした深い寝息ねいきに変わっていった。ハリーのほうは、それからしばらく寝つけなかった。体は疲れていたが、脳が休むまでに長い時間がかかった。