ハリーが寝室に着いたときは、他に誰もいなかった。ハリーは、ベッド脇わきのひんやりした窓ガラスに、しばらく額ひたいを押しつけていた。傷痕に心地よかった。それから着き替がえて、頭痛が治なおればいいがと思いながらベッドに入った。少し吐はき気けもした。ハリーは横向きになり、目を閉じるとほとんどすぐ眠りに落ちた……。
ハリーは暗い、カーテンを巡めぐらした部屋に立っていた。小さな燭しょく台だいが一本だけ部屋を照らしている。ハリーの両手は、前の椅子の背をつかんでいた。何年も太陽に当たっていないような白い、長い指が、椅子の黒いビロードの上で、大きな青白い蜘く蛛ものように見える。
椅子の向こう側の、蝋燭ろうそくに照らし出された床に、黒いローブを着た男が跪ひざまずいている。
「どうやら俺様おれさまは間違った情報を得ていたようだ」
ハリーの声は甲高かんだかく、冷たく、怒りが脈みゃく打うっていた。
「ご主人様、どうぞお許しを」跪いた男が嗄しわがれ声で言った。後頭部が蝋燭の灯あかりで微かすかに光った。震ふるえているようだ。
「おまえを責せめるまい、ルックウッド」ハリーが冷たく残忍ざんにんな声で言った。
ハリーは椅子を握にぎっていた手を離はなし、回り込んで、床に縮ちぢこまっている男に近づいた。そして、暗くら闇やみの中で、男の真上に覆おおいかぶさるように立ち、いつもの自分よりずっと高いところから男を見下ろした。
「ルックウッド、おまえの言うことは、確かな事実なのだな」ハリーが聞いた。
「はい。ご主人様。はい……。私は、な、なにしろ、かつてあの部に勤めておりましたので……」
「ボードがそれを取とり出だすことができるだろうと、エイブリーが俺様に言った」
「ご主人様、ボードは決してそれを取ることができなかったでしょう……。ボードはできないことを知っていたのでございましょう……間違いなく。だからこそ、マルフォイの『服ふく従じゅうの呪じゅ文もん』にあれほど激はげしく抗あらがったのです」
「立つがよい、ルックウッド」ハリーが囁ささやくように言った。
跪ひざまずいていた男は、慌あわてて命令に従おうとして、転びかけた。痘痕あばた面づらだ。蝋燭ろうそくの灯あかりで、創面そうめんが浮うき彫ぼりになった。男は少し前屈まえかがみのまま立ち上がり、半分お辞じ儀ぎをするような格好かっこうで、恐れ戦おののきながらハリーの顔をちらりと見上げた。
「そのことを俺様おれさまに知らせたのは大儀たいぎ」ハリーが言った。「仕方しかたあるまい……どうやら、俺様は、無む駄だな企くわだてに何ヵ月も費やしてしまったらしい……しかし、それはもうよい……いまからまた始めるのだ。ルックウッド、おまえにはヴォルデモート卿きょうが礼を言う……」
「わが君きみ……はい、わが君」ルックウッドは、緊きん張ちょうが解とけて声が嗄しわがれ、喘あえぎ喘ぎ言った。
「おまえの助けが必要だ。俺様には、おまえの持てる情報がすべて必要なのだ」
「御意ぎょい、わが君、どうぞ……なんなりと……」
「よかろう……下がれ。エイブリーを呼べ」
ルックウッドはお辞儀をしたまま、あたふたと後退あとずさりし、ドアの向こうに消えた。
暗い部屋に一人になると、ハリーは壁かべのほうを向いた。あちこち黒ずんで割れた古ふる鏡かがみが、暗がりの壁に掛かかっている。ハリーは鏡に近づいた。暗くら闇やみの中で、自分の姿がだんだん大きく、はっきりと鏡に映うつった……骸骨がいこつよりも白い顔……両りょう眼がんは赤く、瞳孔どうこうは細く切り込まれ……。
「いやだあああああああああ」
「なんだ」近くで叫さけぶ声がした。
“看来我上当了。”哈利的声音尖厉而冷酷,怒气冲冲。
“主人,求您恕罪——”地上那人嘶哑地说。他的后脑勺在烛光中闪烁。他似乎在发抖。
“我不怪你,卢克伍德。”哈利用那冷酷的声音说。他放开椅背,走近那个瑟缩发抖的男子,在黑暗中立在他的跟前,从比平时高得多的角度俯视着他。“你的情况可靠吗,卢克伍德?”哈利问。
“埃弗里对我说博德可能会把它弄走。”
“博德决不可能拿,主人——博德应该知道他不能——这无疑是他竭力抵抗马尔福的夺魂咒的原因——”
“站起来,卢克伍德。”哈利轻声说。跪着的男子急忙从命,差一点儿栽倒。他站起来背还是有点弯,好像鞠躬鞠到了一半,恐惧地膘着哈利的脸色。“你报告得很好,”哈利说,“很好——看来我白花了几个月的时间——可是没关系——我们现在重新开始。伏地魔感谢你,卢克伍德——”
“主人——是,主人。”卢克伍德松了口气,嘶哑地说。“我还需要你的帮助,我需要你能提供的所有信息。”
“很好——你可以走了。叫埃弗里来。”卢克伍德躬身快步倒退,从一个门中退了出去。独自留在黑屋子里,哈利转身对着墙壁,阴影中挂着一面裂了缝的、污渍斑斑的镜子,哈利走过去,他的模样在黑暗中渐渐变大,清晰起来。——一张比骷髅还白的脸——红眼睛里的瞳孔是两条缝——
”不——!”