次の日、ハリーとロンは午前中の休み時間を待って、ハーマイオニーに一いち部ぶ始し終じゅうを話した。絶対に盗み聞きされないようにしたかった。中庭の、いつもの風通しのよい冷たい片隅かたすみに立って、ハリーは思い出せるかぎり詳くわしく、ハーマイオニーに夢のことを話した。語り終えたとき、ハーマイオニーはしばらく何も言わなかった。その代わり、痛いほど集中してフレッドとジョージを見つめた。中庭の反対側で、首なし姿の二人が、マントの下から魔法の帽子ぼうしを取り出して売っていた。
「それじゃ、それでボードを殺したのね」やっとフレッドとジョージから目を離はなし、ハーマイオニーが静かに言った。「武器を盗み出そうとしたとき、何かおかしなことがボードの身に起きたのよ。誰にも触ふれられないように、武器そのものかその周辺に『防ぼう衛えい呪じゅ文もん』がかけられていたのだと思うわ。だからボードは聖せいマンゴに入院したわけよ。頭がおかしくなって、話すこともできなくなって。でも、あの癒者いしゃが何と言ったか憶おぼえてる ボードは治なおりかけていた。それで、連中にしてみれば、治ったら危険なわけでしょう つまり、武器に触さわったとき何かが起こって、そのショックで、たぶん『服ふく従じゅうの呪じゅ文もん』は解とけてしまった。声を取り戻したら、ボードは自分が何をやっていたかを説明するわよね 武器を盗み出すためにボードが送られたことを知られてしまうわ。もちろん、ルシウス・マルフォイなら、簡単に呪文をかけられたでしょうね。マルフォイはずっと魔法省に入いり浸びたってるんでしょう」
「僕の尋じん問もんがあったあの日は、うろうろしていたよ」ハリーが言った。「どこかに――ちょっと待って……」ハリーは考えた。「マルフォイはあの日、神しん秘ぴ部ぶの廊下ろうかにいた 君のパパが、あいつはたぶんこっそり下に降おりて、僕の尋問がどうなったか探るつもりだったって言った。でも、もしかしたら実は――」
「スタージスよ」ハーマイオニーが雷に打たれたような顔で、息を呑のんだ。
「え」ロンは怪訝けげんな顔をした。
「スタージス・ポドモアは――」ハーマイオニーが小声で言った。「扉とびらを破ろうとして逮捕たいほされたわ ルシウス・マルフォイがスタージスにも呪文をかけたんだわ。ハリー、あなたがマルフォイを見たあの日にやったに決まってる。スタージスはムーディの『透とう明めいマント』を持っていたのよね だから、スタージスが扉の番をしていて、姿は見えなくとも、マルフォイがその動きを察さっしたのかもしれないし――それとも、誰かがそこにいるとマルフォイが推すい量りょうしたか――または、もしかしたらそこに護衛ごえいがいるかもしれないから、とにかく『服従の呪文』をかけたとしたら そして、スタージスに次にチャンスが巡めぐってきたとき――たぶん、次の見張り番のとき――スタージスが神秘部に入り込んで、武器を盗もうとした。ヴォルデモートのために。――ロン、騒がないでよ――でも捕つかまってアズカバン送りになった……」
ハーマイオニーはハリーをじっと見た。