「『占うらない学がく』をやめなきゃよかったって、いま、きっとそう思ってるでしょう ハーマイオニー」パーバティがにんまり笑いながら聞いた。
トレローニー先生解雇かいこの二日後の朝食のときだった。パーバティは睫毛まつげを杖つえに巻きつけてカールし、仕上がり具合ぐあいをスプーンの裏うらに映うつして確かめていた。午前中にフィレンツェの最初の授業があることになっていた。
「そうでもないわ」ハーマイオニーは「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ」を読みながら、興きょう味みなさそうに答えた。
「もともと馬はあんまり好きじゃないの」
ハーマイオニーは新聞をめくり、コラム欄らんにざっと目を通した。
「あの人は馬じゃないわ。ケンタウルスよ」
ラベンダーがショックを受けたような声を上げた。
「目の覚めるようなケンタウルスだわ……」パーバティがため息をついた。
「どっちにしろ、脚あしは四本あるわ」ハーマイオニーが冷たく言った。「ところで、あなたたち二人は、トレローニーがいなくなってがっかりしてると思ったけど」
「してるわよ」ラベンダーが強調した。「私たち、先生の部屋を訪ねたの。ラッパ水仙ずいせんを持ってね――スプラウト先生が育てているラッパを吹き鳴らすやつじゃなくて、きれいな水仙をよ」
「先生、どうしてる」ハリーが聞いた。
「おかわいそうに、あまりよくないわ」ラベンダーが気の毒そうに言った。「泣きながら、アンブリッジがいるこの城にいるより、むしろ永久に去ってしまいたいっておっしゃるの。無理もないわ。アンブリッジが、先生にひどいことをしたんですもの」
「あの程度ていどのひどさはまだ序じょの口くちだという感じがするわ」ハーマイオニーが暗い声を出した。
「ありえないよ」ロンは大おお皿ざら盛もりの卵たまごとベーコンに食らいつきながら言った。「あの女、これ以上悪くなりようがないだろ」
「まあ、見てらっしゃい。ダンブルドアが相談もなしに新しい先生を任命にんめいしたことで、あの人、仕返しに出るわ」ハーマイオニーは新聞を閉じた。「しかも任命したのがまたしても半人間。フィレンツェを見たときの、あの人の顔、見たでしょう」