「では始めよう」そう言うと、フィレンツェは、長い黄こ金がね色いろの尻尾しっぽをひと振りし、頭上のこんもりした天蓋てんがいに向けて手を伸ばしてから、その手をゆっくりと下ろした。すると、部屋の明かりが徐々じょじょに弱まり、まるで夕暮れどきに森の空あき地ちに座っているような様子になった。天井に星が現れ、あちこちで「オーッ」と言う声や、息を呑のむ音がした。ロンは声に出して「おっどろきー」と言った。
「床に仰向あおむけに寝転んで」フィレンツェがいつもの静かな声で言った。「天空を観察かんさつしてください。見る目を持った者にとっては、我々の種族の運命がここに書かれているのです」
ハリーは仰向けになって伸びをし、天井を見つめた。キラキラ輝かがやく赤い星が、上からハリーに瞬またたいた。
「みなさんは、『天てん文もん学がく』で惑星わくせいやその衛星えいせいの名前を勉強しましたね」フィレンツェの静かな声が続いた。「そして、天空を巡めぐる星の運うん行こう図ずを作りましたね。ケンタウルスは、何世紀もかけて、こうした天体の動きの神しん秘ぴを解とき明かしてきました。その結果、天空に未来が顔を覗のぞかせる可能性があることを知ったのです――」
「トレローニー先生は占せん星せい術じゅつを教えてくださったわ」パーバティが興こう奮ふんして言った。寝転んだまま手を前に出したので、その手が空中に突き出した。「火星は事故とか火傷やけどとか、そういうものを引き起こし、その星が、土星とちょうどいまみたいな角度を作っているとき――」パーバティは空中に直角を描いた。「――それは、熱いものを扱あつかう場合、とくに注意が必要だということを意味するの――」
「それは」フィレンツェが静かに言った。「ヒトのバカげた考えです」
パーバティの手が力なく落ちて体の脇わきに収おさまった。
「些細ささいな怪け我がや人間界の事故など」フィレンツェは蹄ひづめで苔こけむした床を強く踏ふみ鳴らしながら、話し続けた。「そうしたものは、広大な宇宙にとって、忙いそがしく這はい回る蟻ありほどの意味しかなく、惑星わくせいの動きに影えい響きょうされるようなものではありません」
「トレローニー先生は――」パーバティが傷きずついて憤慨ふんがいした声で何か言おうとした。
「ヒトです」フィレンツェがさらりと言った。「だからこそ、みなさんの種族しゅぞくの限界のせいで、視し野やが狭せまく、束縛そくばくされているのです」
ハリーは首をほんの少し捻ねじって、パーバティを見た。腹を立てているようだった。パーバティの周りにいる何人かの生徒も同じだった。
“特里劳妮教授——”帕瓦蒂开口说,语气既委屈又愤愤不平。
“——是人类的一员,”费伦泽简洁地说,“因此被蒙住了双眼,而且被你们人类的缺陷所束缚。”哈利稍微侧过脑袋看了看帕瓦蒂。帕瓦蒂显得很生气,她周围的几个人也一样。