終業ベルが教室のすぐ外で鳴り、みんな飛び上がった。ハリーは、自分たちがまだ城の中にいることをすっかり忘れて、本当に森の中にいると思い込んでいた。みんな少しぼーっとしながら、ぞろぞろと教室を出て行った。
ハリーとロンも列に並ぼうとしたとき、フィレンツェが呼び止めた。「ハリー・ポッター、ちょっとお話があります」
ハリーが振り向き、ケンタウルスが少し近づいてきた。ロンはもじもじした。
「あなたもいていいですよ」フィレンツェが言った。「でも、ドアは閉めてください」
ロンが急いで言われたとおりにした。
「ハリー・ポッター、あなたはハグリッドの友人ですね」ケンタウルスが聞いた。
「はい」ハリーが答えた。
「それなら、私からの忠ちゅう告こくを伝えてください。ハグリッドがやろうとしていることは、うまくいきません。放棄ほうきするほうがいいのです」
「やろうとしていることが、うまくいかない」ハリーはポカンとして繰くり返した。
「それに、放棄するほうがいい、と」フィレンツェが頷うなずいた。
「私が自分でハグリッドに忠告すればいいのですが、追放ついほうの身ですから――いま、あまり森に近づくのは賢明けんめいではありません――ハグリッドは、この上ケンタウルス同士の戦いまで抱え込む余裕よゆうはありません」
「でも――ハグリッドは何をしようとしているの」ハリーが不安そうに聞いた。
フィレンツェは無表情にハリーを見た。
「ハグリッドは最近、私にとてもよくしてくださった。それに、すべての生き物に対するあの人の愛情を、私はずっと尊敬そんけいしていました。あの人の秘ひ密みつを明かすような不実ふじつはしません。しかし、誰かがハグリッドの目を覚まさなければなりません。あの試こころみはうまくいきません。そう伝えてください、ハリー・ポッター。ではご機嫌きげんよう」