ディーエイがなかったら、自分はどんなに惨みじめだったろうと、ハリーは思った。「必要ひつようの部へ屋や」で過ごす数時間のために生きているように感じることさえあった。きつい練習だったが、同時に楽しくてしかたがなかった。のメンバーを見回し、みんながどんなに進歩したかを見るたびに、ハリーは誇ほこりで胸が一杯になった。試験の「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ」で、メンバー全員が「おおいによろしい・優ゆう」を取ったら、アンブリッジがどんな顔をするだろうと、ときどき本気でそう考えることがあった。
では、ついに「守しゅ護ご霊れい」の練習を始めた。みんなが練習したくてたまらなかった術だ。しかし、守護霊を創つくり出すと言っても、明るい照しょう明めいの教室で何の脅きょう威いも感じないときと吸魂鬼デイメンターのようなものと対決たいけつするような場合とでは、まったく違うのだと、ハリーは繰くり返し説明した。
「まあ、そんな興きょうざめなこと言わないで」イースター休きゅう暇か前の最後の練習で、自分が創り出した銀色の白鳥の形をした守護霊が「必要の部屋」をふわふわ飛び回るのを眺ながめながら、チョウが朗ほがらかに言った。「とってもかわいいわ」
「かわいいんじゃ困るよ。君を守護するはずなんだから」ハリーが辛抱しんぼう強く言った。「本当は、まね妖怪ようかいか何かが必要だ。僕はそうやって学んだんだから。まね妖怪が吸魂鬼のふりをしている間に、なんとかして守護霊を創り出さなきゃならなかったんだ――」
「だけど、そんなの、とっても怖こわいじゃない」ラベンダーの杖つえ先さきから銀色の煙がポッポッと噴ふき出していた。「それに、私まだ――うまく――出せないのよ」ラベンダーは怒ったように言った。
ネビルも苦労していた。顔を歪ゆがめて集中しても、杖先からは細い銀色の煙がヒョロヒョロと出てきただけだった。
「何か幸福なことを思い浮かべないといけないんだよ」ハリーが指導しどうした。
「そうしてるんだけど」ネビルが、惨みじめな声で言った。本当に一いっ所しょ懸命けんめいで、丸顔が汗で光っていた。
「ハリー、僕、できたと思う」ディーンに連れられて、ディーエイに初めて参加したシェーマスが叫さけんだ。「見て――あ――消えた……だけど、ハリー、たしかに何か毛むくじゃらなやつだったぜ」