「逆ぎゃく呪のろいはないのかね」マリエッタの顔を指しながら、ファッジがもどかしげにアンブリッジに聞いた。「この子が自由にしゃべれるように」
「まだ、どうにも見つかっておりません」アンブリッジがしぶしぶ認めた。ハリーはハーマイオニーの呪いをかける能力に、誇ほこらしさが込み上げてくるのを感じた。「でも、この子がしゃべらなくとも、問題ありませんわ。その先はわたくしがお話できます」
「ご記憶きおくとは存ぞんじますが、大臣、去る十月にお送りした報ほう告こく書しょで、ポッターがホグズミードのホッグズ・ヘッドで、たくさんの生徒たちと会合したと――」
「何か証しょう拠こがありますか」マクゴナガル先生が口を挟はさんだ。
「ウィリー・ウィダーシンの証しょう言げんがありますよ、ミネルバ。たまたまそのとき、そのバーに居い合あわせましてね。たしかに包帯ほうたいでグルグル巻きでしたが、聞く能力は無傷むきずでしたよ」アンブリッジが得意げに言った。「この男が、ポッターの一いち言ごん一いっ句く漏もらさず聞きましてね、早速さっそくわたくしに報告ほうこくしに、学校に直行し――」
「まあ、だから、あの男は、一連の逆ぎゃく流りゅうトイレ事件を仕組んだ件で、起き訴そされなかったのですね」マクゴナガル先生の眉まゆが吊つり上がった。「わが司し法ほう制せい度どの、おもしろい内幕うちまくですわ」
「露骨ろこつな汚お職しょくだ」ダンブルドアの机の後ろの壁かべに掛かかった、でっぷりとした赤鼻あかはなの魔法使いの肖しょう像ぞう画がが吠ほえた。「わしの時代には、魔法省が小こ悪あく党とうと取とり引ひきすることなどなかった。いいや、絶対に」
「お言葉を感謝かんしゃしますぞ、フォーテスキュー。もう十分じゃ」
ダンブルドアが穏おだやかに言った。
「ポッターが生徒たちと会合した目的は」アンブリッジが話を続けた。「違法いほうな組織に加盟かめいするよう、みんなを説得せっとくするためでした。組織の目的は、魔法省が学童がくどうには不ふ適てき切せつだと判断した呪じゅ文もんや呪いを学ぶことであり――」
「ドローレス、どうやらそのへんは思い違いじゃとお気づきになると思うがの」ダンブルドアが、折れ曲がった鼻の中ほどにちょんと載のった半月はんげつメガネの上から、アンブリッジをじっと見て静かに言った。