ハリーはダンブルドアを見つめた。今回のことで、ハリーのためにどう言い逃のがれするつもりなのか、見当もつかなかった。ウィリー・ウィダーシンがホッグズ・ヘッドで、本当にハリーの言ったことを全部聞いていたなら、もう逃のがれる術すべはない。
「ほっほー」ファッジがまた爪つま先さき立だちで体をピョコピョコ上下に揺ゆすった。「よろしい。ポッターの窮きゅう地ちを救うための、新しいほら話をお聞かせ願いましょうか。さあ、どうぞ、ダンブルドア、さあ――ウィリー・ウィダーシンが嘘うそをついたとでも それとも、あの日ホッグズ・ヘッドにいたのは、ポッターとは瓜二うりふたつの双子ふたごだったとでも または、時間を逆ぎゃく転てんさせたとか、死んだ男が生き返ったとか、見えもしない『吸きゅう魂こん鬼き』が二体いたとかいう、例の埒らちもない言い逃のがれか」
「ああ、お見事。大臣、お見事」パーシー・ウィーズリーが思いっ切り笑った。
ハリーは蹴けっ飛ばしてやりたかった。ところが、ダンブルドアを見ると、驚おどろいたことに、ダンブルドアも柔らかく微笑ほほえんでいた。
「コーネリウス、わしは否定ひていしておらんよ。――それに、ハリーも否定せんじゃろう――その日にハリーがホッグズ・ヘッドにいたことも、『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』のグループに生徒を集めようとしていたことものう。わしは単に、その時点で、そのようなグループが違法いほうじゃったとドローレスが言うのは、まったく間違っておると指摘してきするだけじゃ。ご記憶きおくじゃろうが、学生の組織を禁じた魔法省令は、ハリーがホグズミードで会合かいごうした二日後から発効はっこうしておる。じゃから、ハリーはホッグズ・ヘッドで、何らの規則きそくも破っておらんのじゃ」
パーシーは何かとても重いもので、顔をぶん殴なぐられたような表情をした。ファッジはポカンと口を開け、ピョコピョコの途と中ちゅうで止まったまま動かなくなった。
アンブリッジが最初に回かい復ふくした。
「それは大変結構けっこうなことですわ、校長」アンブリッジが甘ったるく微笑ほほえんだ。「でも、教きょう育いく令れい第二十四号が発効してから、もう六ヵ月近く経たちますわね。最初の会合が違法でなかったとしても、それ以後の会合は全部、間違いなく違法ですわ」
「左様さよう」ダンブルドアは組み合わせた指の上から、礼れい儀ぎ上じょうアンブリッジに注意を払いながら言った。「もし、教育令の発効後に会合が続いておれば、たしかに違法になりうるじゃろう。そのような集会が続いていたという証しょう拠こを、何かお持ちかな」