ダンブルドアが話している間に、ハリーは背後で、サワサワという音を聞いた。そして、キングズリーが何かを囁ささやいたような気がした。それに、間違いなく脇腹わきばらを、何かがさっと撫なでたような感じがした。一陣いちじんの風か、鳥の翼つばさのような柔らかいものだ。しかし、下を見ても何も見えなかった。
「証拠」アンブリッジは、ガマガエルのように口を広げ、にたりと恐ろしい微び笑しょうを見せた。
「お聞きになってらっしゃいませんでしたの ダンブルドア ミス・エッジコムがなぜここにいるとお思いですの」
「おお、六ヵ月分の会合かいごうのすべてについて話せるのかね」ダンブルドアは眉まゆをくいと上げた。「わしはまた、ミス・エッジコムが、今夜の会合のことを報告ほうこくしていただけじゃという印いん象しょうじゃったが」
「ミス・エッジコム」アンブリッジが即座そくざに聞いた。「いい子だから、会合かいごうがどのぐらいの期間続いていたのか、話してごらん。頷うなずくか、首を横に振るかだけでいいのよ。そのせいで、でき物がひどくなることはありませんからね。この六ヵ月、定期的に会合が開かれたの」
ハリーは胃袋がズドーンと落ち込むのを感じた。おしまいだ。僕たちは動かしようのない証しょう拠こをつかまれた。ダンブルドアだってごまかせやしない。
「首を縦たてに振るか、横に振るかするのよ」アンブリッジがなだめすかすようにマリエッタに言った。「ほら、ほら、それでまた呪のろいが効きいてくることはないのですから」
部屋の全員が、マリエッタの顔の上部を見つめていた。引っ張り上げたローブと巻き毛の前髪まえがみとの隙間すきまに、目だけが見えていた。暖炉だんろの灯あかりのいたずらか、マリエッタの目は、妙みょうに虚うつろだった。そして――ハリーにとっては青天せいてんの霹靂へきれきだったが――マリエッタは首を横に振った。
アンブリッジはちらりとファッジを見たが、すぐにマリエッタに視線しせんを戻した。
「質問がよくわからなかったのね そうでしょう わたくしが聞いたのはね、あなたが、この六ヵ月にわたり、会合に参加していたかどうかということなのよ。参加していたんでしょう」
マリエッタはまたもや首を横に振った。
「首を振ったのはどういう意味なの」アンブリッジの声が苛立いらだっていた。
「私は、どういう意味か明白だと思いましたが」マクゴナガル先生が厳きびしい声で言った。「この六ヵ月間、秘ひ密みつの会合はなかったということです。そうですね ミス・エッジコム」
マリエッタが頷いた。