「大だい丈じょう夫ぶかね」ダンブルドアだった。
「ええ」マクゴナガル先生が、ハリーとマリエッタを引っ張り上げながら立ち上がった。
埃が収おさまってきた。破は壊かいされた部屋がだんだん見えてきた。ダンブルドアの机はひっくり返り、華奢きゃしゃなテーブルは全部床に倒れて、上に載のっていた銀の計けい器き類るいは粉々こなごなになっていた。ファッジ、アンブリッジ、キングズリー、ドーリッシュは、床に転がって動かない。不ふ死し鳥ちょうのフォークスは、静かに歌いながら、大きな円を描いて頭上に舞い上がった。
「気の毒じゃが、キングズリーにも呪のろいをかけざるをえなかった。そうせんと、きっと怪あやしまれるじゃろうからのう」ダンブルドアが低い声で言った。「キングズリーは非常によい勘かんをしておった。皆が余よ所そ見みをしている隙すきに、素早すばやくミス・エッジコムの記憶きおくを修しゅう正せいしてくれた。――わしが感謝かんしゃしておったと伝えてくれるかの ミネルバ」
「さて、皆、まもなく気がつくであろう。わしらが話をする時間があったことを悟さとられぬほうがよかろう――あなたは、時間がまったく経過けいかしていなかったかのように、あたかもみんな床に叩たたきつけられたばかりだったように振舞ふるまうのですぞ。記憶きおくはないはずじゃから――」
「どちらに行かれるのですか ダンブルドア」マクゴナガル先生が囁ささやいた。「グリモールド・プレイスに」
「いや、違う」ダンブルドアは厳きびしい表情で微笑ほほえんだ。「わしは身を隠すわけではない。ファッジは、わしをホグワーツから追い出したことを、すぐに後悔こうかいすることになるじゃろう。間違いなくそうなる」
「ダンブルドア先生……」ハリーが口を開いた。
何から言っていいのかわからなかった。そもそもディーエイを始めたことでこんな問題を引き起こしてしまい、どんなに申し訳なく思っているかと言うべきだろうか それとも、ハリーを退学処分しょぶんから救うためにダンブルドアが去っていくことが、どんなに辛つらいかと言うべきだろうか しかし、ダンブルドアは、ハリーが何も言えないでいるうちに、ハリーの口を封ふうじた。
「よくお聞き、ハリー」ダンブルドアは差さし迫せまったように言った。「『閉へい心しん術じゅつ』を一いっ心しん不ふ乱らんに学ぶのじゃ。よいか スネイプ先生の教えることを、すべて実行するのじゃ。とくに毎晩まいばん寝る前に、悪夢を見ぬよう心を閉じる練習をするのじゃ――なぜそうなのかは、まもなくわかるじゃろう。しかし、約束しておくれ――」
ドーリッシュと呼ばれた男が微かすかに身動きした。ダンブルドアはハリーの手首をつかんだ。