「監かん督とく生せい同士は減点げんてんできないぞ、マルフォイ」アーニーが即座そくざに言った。
「監督生ならお互いに減点できないのは知ってるよ」マルフォイがせせら笑った。クラッブとゴイルも嘲あざけり笑った。「しかし、『尋じん問もん官かん親しん衛えい隊たい』なら――」
「いま何て言ったの」ハーマイオニーが鋭するどく聞いた。
「尋問官親衛隊だよ、グレンジャー」マルフォイは、胸の監督生バッジのすぐ下に留めた、「アイ」の字形の小さな銀バッジを指差した。「魔法省を支持する、少数の選ばれた学生のグループでね。アンブリッジ先生直々じきじきの選えり抜きだよ。とにかく、尋問官親衛隊は、減点する力を持っているんだ……そこでグレンジャー、新しい校長に対する無礼な態度たいどで五点減点。マクミラン、僕に逆さからったから五点。ポッター、おまえが気に食わないから五点。ウィーズリー、シャツがはみ出しているから、もう五点減点。ああ、そうだ。忘れていた。おまえは穢けがれた血だ、グレンジャー。だから十点減点」
ロンが杖つえを抜いた。ハーマイオニーが押し戻し、「だめよ」と囁ささやいた。
「賢明けんめいだな、グレンジャー」マルフォイが囁くように言った。「新しい校長、新しい時代だ……いい子にするんだぞ、ポッティバカ……ウィーズル王者おうじゃ……」
思いっ切り笑いながら、マルフォイはクラッブとゴイルを率ひきいて意い気き揚よう々ようと去って行った。
「ただの脅おどしさ」アーニーが愕然がくぜんとした顔で言った。「あいつが点を引くなんて、許されるはずがない……そんなこと、バカげてるよ……監督生制度が完全に覆くつがえされちゃうじゃないか」
しかし、ハリー、ロン、ハーマイオニーは、背後の壁かべの窪くぼみに設置せっちされている、寮りょうの点数を記録きろくした巨大な砂時計のほうに、自然に目が行った。今朝までは、グリフィンドールとレイブンクローが接戦せっせんで一位を争っていた。いまは見る間に石が飛び上がって上に戻り、下に溜たまった量が減っていった。事実、まったく変わらないのは、エメラルドが詰つまったスリザリンの時計だけだった。