フレッドとジョージはみんなに背を向け、昼食を食べに階段を下りてくる人混ごみの膨ふくれる中へと姿を消した。
困惑こんわくし切った顔のアーニーは、「変へん身しん術じゅつ」の宿題がすんでいないとかなんとか呟つぶやきながら慌あわてていなくなった。
「ねえ、やっぱりここにはいないほうがいいわ」ハーマイオニーが神しん経けい質しつに言った。「万が一……」
「うん、そうだ」ロンが言った。そして、三人は、大広間の扉とびらに向かった。しかし、その日の大広間の天井を、白い雲が飛ぶように流れて行くのをちらりと見たとたん、誰かがハリーの肩を叩たたいた。振り向くと、管かん理り人にんのフィルチが、目と鼻の先にいた。ハリーは急いで二、三歩下がった。フィルチの顔は遠くから見るにかぎる。
「ポッター、校長がおまえに会いたいとおっしゃる」フィルチが意地の悪い目つきをした。
「僕がやったんじゃない」ハリーは、バカなことを口走った。フレッドとジョージが何やら企たくらんでいることを考えていたのだ。フィルチは声を出さずに笑い、顎あごがわなわな震ふるえた。
「後ろめたいんだな、え」フィルチがゼイゼイ声で言った。「ついて来い」
ハリーはロンとハーマイオニーをちらりと振り返った。二人とも心配そうな顔だ。ハリーは肩をすくめ、フィルチについて玄げん関かんホールに戻り、腹ぺこの生徒たちの波に逆さからって歩いた。
フィルチはどうやら上じょう機き嫌げんで、大だい理り石せきの階段を上りながら、軋きしむような声で、そっと鼻歌を歌っていた。最初の踊おどり場ばで、フィルチが言った。
「ポッター、状況が変わってきた」
「気がついてるよ」ハリーが冷たく言った。
「そーだ……ダンブルドア校長は、おまえたちに甘すぎると、わたしはもう何年もそう言い続けてきた」フィルチがクックッといやな笑い方をした。「わたしが鞭むちで皮が剥むけるほど打ぶちのめすことができるとわかっていたら、小こ汚ぎたない小童こわっぱのおまえたちだって、『臭くさい玉たま』を落としたりはしなかっただろうが 足首を縛しばり上げられてわたしの部屋の天井から逆さかさ吊づりにされるなら、廊下ろうかで『噛かみつきフリスビー』を投げようなどと思う童わっぱは一人もいなかっただろうが しかし、教きょう育いく令れい第二十九号が出るとな、ポッター、わたしにはそういうことが許されるんだ……その上、あの方かたは大臣に、ピーブズ追つい放ほう令れいに署名しょめいするよう頼んでくださった……ああ、あの方が取り仕切れば、ここも様変さまがわりするだろう……」